お兄様と屑妹

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  デート(中略)編〜 つづき




 とんと、地面に降ろされたのは人気の全くしない暗い路地裏だった。
 少し肌寒い隙間風が通る、とても静かな場所。


「……で?何でお前はそんな状態になっているんだ」


 人一人担いで長距離を走ったのだからかなり疲れたのだろう、アッシュは荒い息をつき、乱れた髪をかき揚げる。
 ぱさりと落ちてきてしまう前髪がウザったいようで、面倒くさげにチッと鳴された舌打ちに、ルークはどうしようかと口を間誤付かせた。

 乖離しそうな躰を気遣ってくれたジェイドが、一日だけしか効果はないが音素を変えたり増幅させる薬を作ってくれて、しかしその副作用で女の子になってしまった。
 いや、そこまではとりあえず良い、許そう。
 問題はその後の仲間達の反応だ。

 ティアはあの通りネジが外れぶっ壊れてしまったし、アニスには良いんじゃない〜?と軽く流され、ナタリアにはお姉様とお呼びとか口調が汚いですわよ!とか言われ。
 ジェイドは笑って傍観しているだけだし、ガイはこちらに近寄れないらしく頑張れと応援だけしてきやがった。
 ブタザルは初めから論外だ。

 壁に背をつき腕を組んで、黙って一応それなりに聞く格好を見せてくれるアッシュが現状では一番まともに見えてしまうくらいに、仲間達の反応は酷い。
 それはアッシュも同じ意見だったらしい。
 眉間に皺を思いっ切り寄せ、溜め息を吐く。


「乖離を止める、か。お前の躰がそんな状況になっている事や、たかだか薬を飲んだだけで女になっちまうのには驚きだがな。……全く、なんだってそんな馬鹿げた連中とつるんでるんだか」


 本当に全くもってその通りだ。
 皆して俺の不幸を弄ぶなんて、酷すぎる。


「ナタリアもナタリアだ、唐突の事態に冷静さを失い舞い上がってしまうなんて、王女としてあまり好ましくない」
「俺だって!……こんなになっちまってスゲェ戸惑って、頭の中で必死に整理しようとしてんのに、そんな暇さえくれねぇし……」


 ああ、思い返しただけでも泣けてくる。
 たった数時間の間に起こった、あの仕打ち。


「も、遊ばれんのやなんだよ。だから、もう頼れるのはアッシュしかいないんだ!」
「断る」
「ひでっ!!」


 人が必死の思いで懇願しているのに、即答でスッパリと切り捨てられ、ルークはじわりと眼に涙を浮かべた。
 いつも通りといえばそれまでだが、こういう非常時くらい助けてくれたって良いのに。

 あまりにも冷たい言葉と態度に我慢出来無くなって、ルークは胸の内にある不安をぶつけるように喚いた。
 それはもう、この静かな路地裏に響く程の声で。


「俺にはアッシュしかいないって言ってるのに!!こんな時くらい優しくしてくれたって良いじゃん、アッシュのバカバカ意地悪冷徹男!!!」
「ウルセぇ、女みたいにキャンキャン喚くな」
「女だもん!」
「はっ、テメェは相変わらずの屑だな。何故俺がレプリカ如きの手助けをしなきゃなんねぇんだ。女になって身長が縮んで脳味噌も減りまくったんじゃないのか?」


 いつもと同じキツい眼差しを向けられ、いつも以上に酷い言葉を浴びせられ、ルークは堪らずボロボロと涙を流し始めた。
 男の時には涙なんて流さなかったのに、今は女になってしまっているせいだろうか?
 涙腺が弱くて、勝手に涙が零れていく。

 ぐすぐすと鼻を鳴らしひくっと喉を詰まらせるルークに、アッシュはまたしても溜め息をついた。


「大体一日で戻るってんなら、さほど気にする事でもないだろうが」
「うう……だって……俺、俺……アッシュと仲良くなりたいし。…一緒に、いたいんだもん……」
「またそれか。くだらない願望を持つな、鬱陶しい」
「ぅえっ……だって……っま、……アッシュ〜」


 話は終わりだとばかりにルークに背を向け路地裏から抜けようとするアッシュを慌てて追い、ひらひらと靡くオラクル服を掴んだ。
 そして気にせず歩いていく彼の早い歩調に合わせ、ちょこちょこ小走りで付いていく。

 こんな誰もいないような場所に、女のまま独り取り残されてしまうなんて絶対嫌だったし、やっぱり何を言われても今の自分が頼れるのは彼しかいない。


 明るい街道に出てもぐすぐす目元を擦りながら、振り向きもしないアッシュの後を付いていった。
 ずっとくっついていけば諦めて一緒にいてくれるかもしれない。

 と思っていたのだが。


「……ぅ、わぁ!」


 道の段差にごついブーツを履いた足を躓かせて、弱っていた精神と慣れない女の躰では反射出来る筈もなく。
 ルークは無様に転んだ。

 顔面からは免れたが、アッシュの服を離した掌は小さな砂利の粒で擦って痛いし、膝はじんじんする。
 大丈夫?と通行人の女性が慌てて声を掛けて、翻った短いスカートをさりげなく直してくれたが、ルークはありがとうも言えず頷く事すら出来無かった。


「ぁ、貴女……膝から血が」
「ぅ、……うええぇ……っ、う、うう……」


 顔を上げた時には既にアッシュの姿が無く、行き交う人々が遠目に転んだ自分を見ているだけ。
 一緒にいて欲しいだけなのに、傍にいるのすら嫌がられて置いていかれるなんて、あまりにも惨めすぎる。

 地面にべったりとお尻を付け座り込んでいるルークの隣にしゃがんでくれた女性が、おろおろとしながらも頭を撫でてくれて、知らない人からの優しさに涙が滲む。
 知り合いは皆酷い反応ばかりだったから、余計に。

 いきゆく人達の中にも心優しい人が何人かいて、足を止め声をかけてくれた。
 大丈夫と声に出してどうにか頷くも、やはり涙は止まらない。


「どうするか……」


 年輩の男の人が、辺りをきょろきょろと見る。
 そしてすぐに、おや?と声を上げた。


「あの人、君のお兄さんかい?」
「ふぇ……?」


 その声に顔を上げれば、滲む視界の中で、どこかに行ってしまったと思っていたアッシュの姿があった。
 こちらに歩いてくる彼をぼんやりと見つめていると、彼は自分の前で止まる。


「ア、アッシュ……」


 眉間に皺を寄せたまま見下ろしてくる目をおずおずと見つめ返すと、アッシュはハァと何度目かの溜め息をついた。


「……ビービー街中で泣かれたら近所迷惑だからな。仕方無ぇから、元に戻るまで面倒を見てやる」


 そう言って、地面に座ってしまっているルークの脇に腕を入れ、ひょいと持ち上げ立たせてくれた。


「良かったなぁ嬢ちゃん、兄ちゃんが迎えに来てくれて」
「あ、お兄さん。この子膝を怪我しているのよ」
「私絆創膏持ってるわ!」
「じゃあ俺のハンカチ使ってくれよ。二枚持ってるから、それやるよ」
「ありがとうございます、ありがたく使わせていただきます」


 その途端、ルークはビックリしてぽかんと口を開け、アッシュの顔を見上げた。

 なんと周りにいる人間達に向かって、彼は淡く優しげな微笑を浮かべたのだ。
 あまりにも劇的な変化にどう反応すればわからなくて、戸惑ってしまう。
 もちろん自分にではなく、あくまで周りの人達に対しての社交辞令的なものなのだとはわかるのだけれど。
 初めて見るものにどうしてか心臓がドクンと大きく鳴った。

 アッシュはその笑みのままハンカチを受け取り、ルークの長い靴下が破けている状況を確認すると、太股から覆っているそれをそっと膝下まで下ろした。
 自分の前に膝を付き、怪我した膝に受け取ったハンカチを宛て、血を拭ってくれる。
 それから傷の部分に絆創膏を貼る。


「……もう大丈夫か?」
「ぅ、うん」
「そうか。皆さん、妹がお世話になりました」


 立ち上がり丁寧に頭を下げるアッシュに、ルークも慌てて頭を下げる。

 妹……妹か。
 周りの人達の思い違いに合わせているだけなのだろうが、それでも嬉しくなってきて、自然と顔に笑みが浮かべてしまう。


 良かったわねと声をかけてくれながら散り散りになっていく人達と同様、アッシュもまたその場から離れようとするのに、ルークはどうしようかと一瞬だけ迷った。
 しかし彼の方から細い手首を掴んできて、そのまま一緒に歩かされる。


「あ、アッシュ……その」
「とりあえずその服を着替えろ。それでは男に戻った時にキツい。特に靴は、サンダルにでも代えておいた方が良い」
「そ、そうだよな」


 全くもってその通りだった。
 こんな服で男になったら縫い目から破けていきそうだし、靴サイズなんて三センチも違うんだから、戻った時にはキツいですまなそうだ。

 しかしいつも着ている服はティアと買い物した時に脱ぎ、そのまま彼女が持っている筈だ。
 財布も持っていない。

 さてどうしたものか……と、ぶつぶつと口に出しどうしようか考えていると、ふと手首を掴んでいたアッシュの手が自分の掌を辿り、指を触ってきた。
 そうして手をきちんと握ってくれた事に眼を見張り。


「それに、そんなビラビラの服は俺の趣味じゃねぇからな」
「…………へ……?」


 言われた意味がわからず彼を見上げれば、アッシュはやや後ろにいたルークを隣にまで引き寄せ、にやりと微かに口元に弧を描いた。


「違うものを買ってやると言っているんだ。良いな?」
「ぁ……うん、ありがとうアッシュ!」
「それと女の間は、俺の事は『お兄様』と呼べ、屑妹」
「ふえ?」


 ルークは思わず首を傾げた。
 ナタリアと言いアッシュと言い、もしかしてキムラスカの王族は妹に憧れるものなのだろうか。
 クッと喉を鳴らし笑った彼を見ると、考えが顔に出ていたのか、違うと首を振ってきた。


「どうやら周りの者達からは兄妹に見えるようだからな。ならばいっそレプリカどうこうより、周りに合わせてしまっておいた方が店に入っても気が楽だ。兄として妹の傍にいる。それなら有り得ない事を勘ぐられる事もされないから、俺としても周りが気にならない。共にいてやっても良いと妥協出来るって意味だ」
「そっか。そうだよな」


 憎まれているのだ、自分は。
 彼から。


「ぇと……お兄様」


 と、戸惑いながらも呼びかけたら。
 アッシュが先程人間達に向けたものよりももっと、凄く優しい目で見下ろしてきて、頭まで撫でてくれた。

 どうしたんだろうか、今日のアッシュは。
 全然怒らないし、俺にこんなにも優しい。

 ルークは嬉しくなって、えへへと笑みを零した。
 こうして憎まれている筈のアッシュと仲良く歩く日が来てくれるなんて、一時的にであっても女になって良かったと、先程までとは真逆な事を心の底から思った。












 昼を二時間程過ぎた頃。
 所々に雲の浮かぶ青い空が見える窓の外を眺めつつ、時折前へと視線を戻せば、ルークがもくもくと昼飯を食べている。
 女になってしまい食べるスピードも遅くなったようで、あまり量も多くない筈だがそれでも己よりだいぶ遅い。
 まぁ女なんてどいつもこいつもこんな感じだったかもしれない。

 先に食べ終わっていたアッシュは、彼女を待ちながら食後のコーヒーを口に運んでいた。
 その口元に微笑が浮かぶ。
 ルークの焔のツインテールが揺れる様は、思わず笑みを浮かべてしまうような、どこかしら魅力的なものがあった。

 こいつが女として目の前に現れてからというものの、どうしてもいつものように突き放し切れない。
 原因は明確で、普段は怒鳴れば同じ声の怒鳴り声が返ってきて、それが余計に苛立ちを感じさせていたのだ。
 だが今日は、返ってくる声がいつもよりもずっと高く己の声とは違うので、苛立ちを覚える事がない。

 むしろ頼りない危うさが滲み出ていて、先程人混みにまみれ後ろにいた筈のルークの気配が無くなっていた事に気付いた時、慌てて道を引き返したくらいだ。
 それに。


「……お兄様?」
「いや、何でもない」


 じっと彼女の顔を見ていたら、ルークが視線に気付きこちらを伺ってきた。
 緩く首を横に振れば、おずおずとまた食事を始める。

 いつものように名前で呼ばれると、どうにも癪に障るし違和感があったので呼び方を変えさせたのだが、これはこれでどうにも胸がくすぐったくなってしまうのだ。
 昔よく、ナタリアと共に妹が欲しいと言い合っていた事を思い出した。
 そのせいもあって、あまり邪険にも出来ずこの有様。


「ごちそうさまでした」


 ゆっくりだが目の前にあった食事をきちんと食べ終わったルークは、スプーンを置いた。
 そしてこちらを伺ってくる様子は、まるで子犬のようだ。


「もう少しここにいた方が無難だろ。また何か飲み物頼むか?」
「あ、うん。お兄様が良いって言ってくれるなら」


 ルークは財布を持っていないのだから、支払いは全部アッシュなので気が引けるのだろう。
 だが先程新しく買ってやった服は随分嬉しかったらしく、凄く喜んで何度も礼を言ってきた。
 まぁ、あんな目立つビラビラな服と下着が見えそうなスカートなんざ着ていたのだから、大人しいシンプルな服を買ってやればそれはもう嬉しいのが当たり前だ。

 男に戻った時でも大丈夫なようにと、首元が広く開いた大きめの黒い上着。
 スカートは脹ら脛を覆う程長い、紅がメインのチェック柄をした巻きスカート。
 そしてサンダル。
 男が女になってしまったなら、この程度が普通……というより、これが限界だろう。

 ルークは頼んだオレンジジュースを飲みながら、時々こちらをちらりと見てくる。
 眼が合うと、頬をほんのりと赤く染め、向こうから眼を逸らされた。

 何を考えているのかわからないが、フォンスロットを繋げる事も出来無くなってしまっているので、わからないままだ。
 しかし敵意を向けられていないので、さほど気にするような事でもない。

 そんなふうに、アッシュは久しぶりに連れを伴っている状況で、のんびりと食後を過ごした。








「……で?」
「…………」
「いつになったら戻るんだ?」
「……わかんない」


 賑やかな街道を歩きながら、すっかり夕焼け色に染まった空を見上げ、アッシュは今日何度目かわからない溜め息をついた。
 隣に立つルークの肩がびくりと震える。

 ルークが薬を飲んでからもうだいぶ経っているらしいが、まだ女のままで、男に戻る気配は一向に無い。
 聞いたら「シンデレラ」という名の薬だと言われ、随分ふざけた名だとは思ったが。
 もしかして夜中の12時にならないと戻らなかったりするのだろうか?
 それこそ馬鹿げている、どんな原理だ。

 とりあえずもうすぐ夜になるので、もう街の外に出るのは危険だろう。
 こいつに付き合ってだいぶ予定が狂ったが、とにかくは宿屋に行き部屋を取って今日の寝床を確保しなければならない。


「お前はもう奴らの所に帰れ」
「やだ」
「斬るぞ」


 速攻で返ってきた返答にアッシュはぴくりと眉を動かし、街中など気にせず剣に手をかけた。
 しかしルークはひるむどころか、引っ付いてくる。
 横から腰に腕を回されぐりぐり頭をすり付けられれば剣を抜く気も失せ、出るのは溜め息ばかりなり。


「全く……アイツ等が心配してるんじゃないのか?」
「知らない。男に戻るまでお兄様と一緒にいる」
「おい……」
「だって!……だって女ならお兄様、優しいんだもん。妹としてなら一緒にいてくれるんだもん」


 大きな眼を潤ませ泣きそうな顔で見上げられ、しかもそんな事を言われてしまい、アッシュは言葉につまった。
 そんな事を言われる程優しくしてやった記憶は無いのだが、邪険にしていないだけで、もしかしたらこいつはそう感じているのかもしれない。
 それくらい普段は憎しみばかりが全面に出ているのだ。

 中身は同じ人物でも、女である今のルークはどうしても憎めない。
 それが正直な感想。

 しかしその口調は何だ、完全に女みたいだぞ。


「……わかった。アイツ等とは違う宿を取る、それで良いか?」
「……うん!」


 妥協案を出せば、ルークは嬉しそうな笑顔になる。
 それに吊られるように己もまた笑みを浮かべたのを自覚したが、わざわざ隠そうともしなかった。

 結局あまり目立たない裏通りの宿屋に入り、その頃にはもう空は闇に包まれていた。
 海に囲まれた、いくつもの星が瞬く美しいグランコクマ。
 ルークが部屋を取ってくると言ったので彼女に任せ、アッシュは一度また外へと出た。
 一人で建物から姿を見せれば、ふと近寄ってくる人物が。


「……連れ帰っても構わないんだが?」
「それじゃあルークが可哀想だろう。様子を見に捜していただけだから、すぐ帰るよ」


 現れたガイは苦笑を浮かべ、ドアを開けっ放していた隙間から、宿の中をちらりとだけ覗いた。


「……やっぱりまだ女のままなのか。帰ってこないからそうだろうとは思ったけど」


 それからガイはこちらに向き、荷物袋を出してきた。
 何だと疑問に思いながらも手を出すと、ルークの普段着を持ってきたという。
 納得し受け取り、そういえばとガイの顔を見返す。


「薬の効果は一日なのか?」
「ん?……ん〜、一日くらいだそうだ。明日の朝にならないと戻らないかもしれないな」
「……そうか。俺に預けるなんて、心配で気が気でないんじゃないのか?」


 クッと喉を鳴らし笑ってやれば、ガイは素直にも肯定を示してきた。
 己がこいつに憎まれている事も、ルークが大切なのも知っているので、今更傷つく事でもない。


「でもさ」
「……なんだ?」
「ルークが女になっている間は、お前と一緒の方が安全な気がするんだ、うん。というか、こっちは本気でヤバイ」
「…………聞かないでおいてやる」


 昼間のあの女の様子からして、時間が経つにつれ狂乱が酷くなっている気がしたが、あまり想像しない方が得策だろう。
 あれは、女が好きなのか……?
 いや、やはり考えるのは止そう。


「とりあえず、今日一日だけ預かっていてくれ。じゃあなアッシュ」
「ああ」


 軽く手を挙げ去っていくガイを見送り、アッシュは宿の中に入った。
 予約し終わったルークが入り口のすぐ傍で待っていて、こちらを見上げてくる。


「ガイ、何だって?」
「こっちにいて良いと」
「そっか、良かった〜。あ、はい鍵。お兄様と二人部屋だ!」


 頬を染めた可愛らしい笑顔に、そうかと頷きそうになって。
 はたと気付く。


「…………は?」
「いやわかってたんだわかってたんだけどでも俺お兄様と一度で良いから同じ部屋で泊まってみたかったんだ!」
「…………はぁ」


 と、長い溜め息が出た。

 ノンブレスで随分早口で言って、誤魔化しているつもりだろうか。
 てか、なんでそんな眼を潤ませて訴えてくるんだ、くそ。
 わざとか、わざとなのか?
 俺が邪険に出来無いでいるのを逆手に取っているのか?

 女と二人きりで宿に泊まるだなんて何やら頭が痛くなりそうな状況だ。
 だが、ルークの期待に満ちた眼を見ていると否とは言えず、しぶしぶ承諾する事となった。





  to be continued...

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同室はお約束です。

2007.12.15
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