白き世界  2

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 サワサワ、サワサワ。


 風に揺られ、一山を多い尽くす広大な森がざわめく。

 まるで、こちらだと道を示すかのように。


 白い月の出ている夜空の下、本来の鮮やかな緑を一変させて黒く色付いている森の中に、葉の囁きでは無い微かな音が混じっていた。
 まだ青年と呼ぶには幼い、忍の姿である。

 だがその外見では想像出来無いほど、もの凄いスピードで走っていた。
 そして本来黒い筈の眼は、今は紅蓮の如く色を赤く染めている。

 うちはイタチ。

 忍として、否人間として稀に見る天才だと言われている彼は、常に冷静沈着。
 それが、誰もが思う彼への感想であった。

 しかし今、その一般的見解を覆してしまうほど、イタチは焦りを見せていた。



「サスケ、何処だサスケッ!」


 走るスピードを遅くしたかと思えば、辺りを見渡し、大きな声を出して必死に弟の名を呼ぶ。

 イタチは、サスケが修行する為に一人でよく来る場所を知っていた。
 自分もまた弟と一緒にそこで時々修行していたからだ。
 だから一目散にこの山へと入った。

 そしていつもの森の中にある小さな空間へと入り、丸太の下に無造作に落ちていた巻物を見て余計に焦っていた。
 どう考えたって、襲撃されているのだから。


「くそ…何処だ、サスケッ」


 興奮のあまり写輪眼を開き、ほんの微かなチャクラと人間の残り香を頼りに走る。
 相手は四人、いや五人であるか。
 焦りながらも、情報を拾い集めるのは流石天才というべきであろう。

 もしサスケに何かあった時には……必ず、見つけ出して殺してやる。
 そう心に誓い、とにかくはサスケの無事を願い、走る。

 暗い夜の中でも、時折木の枝や地面にクナイが刺さっているのを見つけ、そこに血の臭いがしないのを瞬時に確認していった。
 もし怪我を負っているのであれば、掴まってしまった可能性が高くなり、もうこの森にはいないだろう。
 それは、最も最悪な事態である。

 しかし、イタチはサスケがまだこの辺りにいる気がしていた。
 それはチャクラであったり、広範囲に渡り走り回った形跡であったり。
 だが何よりも。


 サスケは、誰でもない―――この俺の弟なのだから。

 どんな事があっても、きっと無事だ。


 ふと、また風が吹いた。
 ふわりと感じ取れたそれに、イタチは走っていた足を止める。


「…サスケ?」


 今、サスケの気配がしたような気がした。
 一体何処から?

 そう思い辺りを見渡せば、囁く森が示してくれていた。
 不自然に、木が全く生えていない場所。
 風に揺れて葉が落ち、音を立てず消えていく姿に、促されるように歩み寄る。

 そこは、谷だった。
 左右が長く何処までも伸びている、この山を分断しているような大きな谷。
 下を覗けば、真っ黒い、深い深い闇が広がっている。

 しかし聞こえてくる微かな水の音が、この谷にも底があるのだと教えてくれる。

 イタチは迷う事無く、闇の中へと飛び込んだ。
 多少の風の影響を受けながらも、頭からぐんぐんと落ちていく。

 赤い眼は、闇の底を見つめていた。
 そして両手に、大量のチャクラを練る。

 水の流れる音がどんどんと大きくなってきた。
 これだけ幅が広く深い谷だ、底に流れる川もかなり大きい筈。

 ドドドドドドド……。

 見えた川は、酷く荒れていた。
 けたたましい音に、ここは谷底でも急な角度をしているのだと伝えてくる。
 イタチは頭から落ちていくまま、そんな荒々しい川へとチャクラを練った両手を翳した。

 水面とチャクラがぶつかる瞬間。

 ドォンと大きな音を立て、川を流れる水が吹き飛ぶ。
 底に転がっている石までが粉々に砕け散る。

 両手のチャクラを消し底に足を付いた時、その場には水の一滴も無かった。

 左右に分断されている水は、まるでその動きを止めたかのよう。

 トン、と。
 イタチが地を蹴り、川の流れる場所から脇へと飛んだ。
 その途端、分断されていた水がけたたましい音を立てながら流れを再開させ、また一つの川となる。

 そして紅い眼は、その川の流れていく先を見据えていた。















 谷の間を走り抜けるたびサスケの気配が強くなり、足を速めた。
 早かった川の流れも、いつの間にか緩やかなものへと変わっている。

 視界の隅に、白い月が見えた。
 谷へと落ちた時には深い闇の底だったのが、上からの森の囁きが聞こえるようにまでなっている。
 頂近くから斜面を通り、山の端の方にまで来ているようだ。

 また、視界の隅に光を見つけた。
 映ったそれに、イタチは眼を見開く。


「…サスケ!」


 光は、炎だった。

 木の枝を集め火を付け、石で囲っている焚き火。
 そしてその傍に、自分の捜し求めていた存在を見つける。


「サスケ!サスケ!!」


 叫ぶように何度も名を呼びながら、最愛の弟へと駆け寄った。

 サスケは下着一枚という格好で、ぐったりと土の上に横たわり、躰を丸め眠っていた。
 見つけた喜びを感じる暇など無く、呼吸の乱れと剥き出しの躰の痛々しい惨状に、慌てて手を細い首筋に宛てる。
 脈は酷く弱く、何よりも冷たい。

 あちこちが傷だらけで、自分で大急所血はしたようだが、服を破って巻いている箇所からは血がじっとりと滲んでいた。
 右足が木の棒で固定されているところを見ると、どうやら骨折までしてしまっているらしい。
 火の近くにいても寒いようで、小さな躰は眠りながらカタカタと震えている。

 ハーフパンツは木の棒に引っ掛け、火の傍で乾かしている最中であった。
 その近くにある上着は、ボロボロに裂いてある。
 サンダルは片方しかない。

 どういう状況になっているか、これだけでは判断付かなかった。
 追われた奴等に傷付けられたのか、それとも谷に落ちてこうなったのか…?

 どっちにしろ、サスケをこのような状態にした連中に、一層の殺意が芽生える。

 それでもとにかく今は治療をしなければと、イタチはすぐさまチャクラを練った。
 淡い、蒼い光を掌に灯す。
 それでゆっくりと、目の前の血の気の無い痛々しい躰を撫でていく。

 ゆっくり、ゆっくり、優しく。

 緩やかな流れを体内に送り込む。


「…ん………」
「サスケ?」


 触れている感覚が伝わったのか、サスケが小さく身じろぎし、薄っすらと眼を開けた。
 ぼんやりとした様子であったが、大きな漆黒の眼をイタチの方へと視線を向ける。
 イタチの眼も、いつの間にか黒へと戻っていた。


「に、…さん?」
「ああそうだ、兄さんだ。サスケ、無事で良かった」


 弱弱しい声に答えれば、サスケはまだ苦しそうに眉根を寄せてはいるものの、眠っていた時よりかは幾分か和らいでいる表情で薄く笑みを浮かべる。
 その笑顔にイタチはようやく安心し、ほっと息を吐く。


「あったかい、兄さん」
「そうか」


 ほわりと、嬉しそうに笑うサスケ。
 頷き返すものの、しかしチャクラでは傷は塞ぐ事が出来ても、失った血までは元に戻せない。
 その為、たとえ外傷を全て治したとしても、触れている躰は冷たいままだ。

 それでもイタチはチャクラを練り続け、サスケの柔らかい肌を撫でた。
 優しく、慈しみを込め。
 右足の骨折部分にも手を宛て、蒼い光を送り込む。

 一通りの治療が済み、サスケに触れていたチャクラを消した。


「…よし、終わったぞ。まだ何処か痛いか?」
「ん、大丈夫…みたいだ」


 サスケは躰をのそりと起こし、あちこち確かめ始めた。
 土を払いながら、頭を触ってみたり、折れていた右足に触れたり。
 
 だがやはり、まだ寒いのか躰はカタカタと小さく震えている。


「サスケ、こっち来い」


 イタチは痛みの感じなくなったであろうサスケに、そっと腕を回した。
 小さな躰を背中から抱き込み、暖めようと腕や腹をさすってやる。
 するとサスケは、力を抜いてイタチへと寄り掛かってきた。


「へへ、すげぇあったかい」
「それは良かった」
「俺、早く兄さんに会って抱き締めてもらいたかったから、嬉しい」
「…サスケ?」


 自分を見上げてきたサスケは、少し憂いを帯びていた。
 それが炎の光に彩られ、艶やかを増す。
 思わず、惹き込まれそうになるほどに。

 ぴたりと躰をさする手を止めじっとサスケの眼を見れば、サスケは苦笑を漏らし、また火へと眼を戻した。


「アイツ等、兄さんの事を妬んでいた。その腹いせに、俺の所に来たみたいでさ。それがなんか……ちょっと、悔しくて。俺は兄さんみたいに誰かに嫉妬される程、強くないから」
「な、にか。されたのか…?」


 そうだ、サスケの笑顔で忘れていたが、この子は何者かに襲われたのだ。
 しかもあれだけの怪我をしていた。

 だがイタチの重い口調とは裏腹に、返ってきた声は明るいものだった。


「いや?何か、ヤルだとか何か言ってたけど。とりあえず逃げたから、別に何も」
「………」
「あ、怪我したのは川に落ちたからなんだ。あんな奴等に殺されるほど、俺だって弱くないぜっ?」


 イタチの沈黙をどう取ったのか、サスケは慌ててこちらを見上げてくる。

 その必死さと年頃の可愛らしさに、とりあえずは笑みを返した。
 が、内心は怒りが込み上げてきていた。

 ヤル、だと?
 この俺の最愛なる弟に、そのような事をしようと考える愚か者共がいるなんて。
 サスケを、穢そうとする者がいるだなんて。

 自分への嫉妬からだなんて、くだらない理由などどうでも良い。
 ただ他者がそう考える事が、許容出来無い。
 まして本当に行動に起こそうとする連中などには、黙っていられない。

 サスケは、俺のものなのだから。


「でさ。でもさ。それだけ強い兄さんが俺の兄さんだって思ったら、滅茶苦茶嬉しくなった。そしたら、いつもみたいに兄さんに抱き締めてもらいたくなった」


 腕の中にある、無邪気に笑う弟を見下ろす。

 暗い、闇夜の中。
 炎の淡い橙色の光に彩られたサスケの肌が、艶めかしくこの眼に映る。

 本来のあどけない可愛らしさと、炎によって婀娜さが現れ、重なり合う姿。
 子供の丸みを帯びた、柔らかな肌の触り心地。


 自分にはサスケが全てだった。
 それこそ、何を差し置いてでもこの弟を愛している。

 大事な大事な存在。


 だが大切にしたいと思う柔らかな想いと同時に、躰までもが欲しいという滾るような欲望もあった。

 欲しい、サスケが。
 心も躰も、全てを自分のものにしたい。


 ―――他人に、手出しされる前に。


「……サスケ」


 腹に回している腕を引き、より躰が密着させようと抱き寄せ、胡座を掻いた足の間に乗せた。
 そしてゆらゆらと揺れる炎の熱に浮かされるように、サスケの躰に触れていた掌を動かしていく。


「に、さん…?」


 ゆっくりと脇腹を撫でれば、サスケはひくりと躰を揺らした。

 布越しに自分のペニスに宛てられているサスケの小振りな尻に、興奮が高まる。
 欲望のままに、イタチはまだ湿っているサスケの下着に手を掛けた。
 一気にゴム部分を太股まで下ろせば、小さくて可愛らしいペニスが露わになる。


「ゃ、何を。兄さんっ…」


 ゆらゆらと揺れる炎に彩られ妖しく見えるペニスに魅せられながら、太股の裏を持ち足を曲げさせ、片方ずつ足を抜き下着を脱がせていく。
 全裸になったサスケは、炎のせいではなく顔を赤らめていた。
 外で素っ裸になっているのが、恥ずかしいのか。

 ゆっくりと心臓のある薄い胸板を撫で、トクトクと規則正しい音を刻んでいる事を確認する。
 小さな躰は、だいぶ暖かくなっていた。
 そのまますぐ上にある小さな乳首をそっと摘めば、身動ぎ、微かな声が漏れてくる。


「んっ……ぅ、や、ヤダ、ぁ」


 制止しようと腰に回しているイタチの手をきゅっと掴んでくるサスケに、イタチは逃げられないよう、抱いている腕により力を込めた。





  to be continued...

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アクション系シーンを書くのが好きです。
でも撃沈…。
そしてイタチ兄さん暴走。

2008.06.07
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