proof 2
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内股を緩やかに撫でられる感触がくすぐったくて、思わず笑ったら、尻の間を撫でられて小さな悲鳴が漏れた。
唇はゆっくりと腹から臍へと辿っていき、下肢へと下りていく。
ゆっくり、ゆっくりと舌が這わされて、ペニスの先端に辿り着いた途端、チュッと強く吸われた。
「ぅあ!ぁ、ん」
躰は愛撫に感じ喘ぎながらも、意識は平静を保っていた。
ああまたこの夢なのかと、漠然と思う。
しかしまるで現実であるかのようにヤバいくらい感じてしまい、気を抜けば頭までが快楽に侵食されて可笑しくなりそうだった。
これは、本当に夢なのか?
そんな錯覚に、どうしても陥りそうになる。
「ぁ、ぅ……ん」
だが、夢なのだ。
これは夢だ。
「はぁ、…あ、んっん」
腸壁を押され掻き回されて、そのたびにくちゅくちゅと卑猥な音が鳴り響く。
どんどんと穴を広げられ、一本から二本、三本へと量が増えていっても痛みなんて感じない。
奥の感じる部分を執拗に押されて、背中が何度も撓る。
夢だ、夢なのに……どれだけ愛撫を施されているのか、快楽に浮かされ朦朧とし始めている頭では、状況把握が難しくなってきた。
気持ち良くて、喘ぎも涙も止まらない。
「ぁ…あ、んっ、んは…ぁ」
ガクガクと躰が戦慄く。
躰が熱くてどろどろに溶けていて、怖くなる。
夢だ、夢だ、…夢なんだ。
だからもう、止めてほしい。
こんな残酷な夢はもう、見たくないのに。
「…入れる、からな……」
朦朧とした中で、切羽詰った声が聞こえてくる。
そして秘部に宛がわれたモノ。
それは、もの凄く熱く猛っていて。
「ぁ…まっ、銀さっ、んぁああ!」
愛しい人の名を呼んでしまった途端、一気に奥の奥までずぶりと突かれて、森田は躰を弓形に逸らした。
イったかどうかなんて、わからなかった。
ただずっと掻き回されぐずぐずに解かされていた胎内はどうしようもないくらいに敏感になっていて、埋め込まれた熱と中をいっぱいにされた質量に、自分のペニスが震える。
全身は壊れそうな程に疼き、汗を吹き出してずっと痙攣していた。
びくん、びくん、と腰が跳ね、行き過ぎた快楽に涙がぼろぼろ零れていく。
開いた口が塞がらず、涎が顎を伝っていく。
「…りた」
「ん…うあ、あ」
「森田」
―――嘘、名前を呼ばれている。
なんて思ったら、この躰が眼を開けてしまった。
なんだ、もう終わってしまうのか。
折角いつもよりも少しだけ進展した内容で、凄く悲しかったけれど…凄く嬉しかったのに。
しかしぼんやり眼を開けていても、今日は相手の姿が消えない。
むしろどんどんハッキリしてきている。
「おい森田、大丈夫か?」
「銀さん…?」
こうまでしてまざまざと姿が見えてしまうと、喜びと同時に罪悪感もとてつもない。
起きたら、どういう顔して彼に会えば良いのか…。
「顔色悪いな。昨日の時点でこうなるんじゃねぇかとは思っていたが……しかしお前、本当に大丈夫か?扉越しでも聞こえてくるくらい、魘されてたぜ?」
「は、はぁ……?…え?ええ!?」
あれ、もしかしてもう夢じゃ、ない…?
ベッドに横になったまま、森田は忙しく眼を動かして周りを確認した。
自室だ。
朝になっていて、カーテンで陽の光は遮られてはいるが室内はそれなりに明るい。
そして顔を覗き込んでくる、銀さん。
しっかり服を着ているし、そもそも自分と同じベッドになど入っていない。
つまりこれは、眠っている自分を起こしに来たという…。
「ぅ、うわわわわっ!…ぃっ」
慌てて飛び起きた途端、頭痛に苛まれた。
一体どうしたというのか。
ズキズキと痛いし、微妙に気持ち悪い。
頭を抱えてじっとしていると、頭上から銀二の呆れたような溜め息が落ちてきた。
「二日酔いだ。覚えてねぇのか?」
「…………あ」
そうか、そういえば昨晩、仕事が終わった後に安田や巽と一緒にバーで飲んだのだ。
初めは仕事の話だったはずなのに、いつの間にかオッサン達の恋バナという微妙な話題になっていて。
しかし二人の会話を聞きながら銀さんの事を考えていたら、最近の苦悩や遣る瀬無さのせいで箍が外れてしまったらしい。
自棄酒のつもりは全く無かったんだが、気が付けばかなりのアルコールを摂取していた。
家に帰ってきて、あまり眠くなくてうだうだしていたら、銀さんに話しかけられた。
てっきりもう眠っていると思っていたから、少しビックリしたのも覚えている。
だが同時に、人の気も知らないで声を掛けてきた事に酷くイラついてしまって、見っとも無く当たってしまった。
自分が勝手に銀さんに惚れて、見込みが無いからと勝手に凹んでいるだけなのに。
銀さんは、悪くないのに。
「あの、昨日はすみませんでした。ご迷惑をお掛けしたみたいで…」
「あれくらいなら構わんさ」
頭を下げたら、銀二は喉を鳴らして笑った。
その表情がとてつもなくイイ顔で、森田は慌ててまた俯いて毛布に顔を押し付けた。
ううヤバイ、なんでそんなふうに笑うんだ。
こんなんじゃ心臓が持たない。
バクバクと、とてつもない早さで鼓動が刻まれている。
「おい森田?気持ち悪ぃのか?」
「だ、大丈夫です」
大丈夫だから、これ以上人の顔を覗こうとしないで下さい…!
いやいやいやいやマジで大丈夫ですから背中とか撫でないで!!
なんて言ったら激しく怪訝な顔をされそうだったので、結局黙って彼から離れていくのを待つしかなかった。
「起こしちまってなんだが、まだ眠いなら横になれ」
「ぃ、いいえ。もう起きます…」
「そうか?ならとりあえず飯を食った方が良いな。それから薬飲んで、今日は大人しくしておけ。良いな?」
「はい…」
頷くと、飯用意してくると言って銀二は離れていった。
部屋を出て、ドアが閉められる。
「………はぁ」
一人になると、森田は盛大に溜め息を吐き、ベッドに突っ伏した。
突っ伏した途端頭が揺れて痛みが酷くなったが、ぎゅっと眼を瞑ってやり過ごす。
朝からかなり疲れてしまった。
彼としては、多分昨日ぶっ倒れそうだった自分を気遣っての行動だったのだろう。
しかし夢から覚めた途端視界に入られると、滅茶苦茶心臓に悪い。
「あー…股間、バレなくて良かった…」
唸るように呟く。
たとえ眠っている時に膀胱に尿が溜まって勃起してしまうだけの朝の生理現象だとしても、あんな夢を見てしまっているせいか、罪悪感がとてつもなかった。
今の心理状態では、朝勃ちしちゃいました、なんて冗談めいて笑う事も不可能だ。
というより、果たして銀二はシモネタに乗ってくるのだろうか?
………。
駄目だ、想像付かない。
「とりあえず、トイレ行くかな…」
ああもう、本当に情けない。
「………」
サラダを用意し、二人分のパンにバターを塗りながら、銀二は眉間に皺を寄せて難しい表情をしていた。
考えているのは、当然先程の森田についてである。
何だったんだろうか、あれは。
森田の部屋の前を通った途端に聞こえた、あの呻き声。
具合悪いのかと心配し、様子を伺う為に部屋に入ったまでは良い。
しかしまだ眠っている顔を覗けば、呻いているというよりは……まるで喘いでいるような声と、表情。
夢の中で女でも抱いているのか?と初めは思ったものの、彼の呼んだ名前は、自分だった。
咄嗟に揺さぶり起こしたくらい、気が動転してしまっていたのは否めない。
けれども、合点は行った。
ここ最近の自分に対する余所余所しさは、夢のせいだったらしい。
昨夜の森田の台詞からも、夢に自分が出てくるせいで勝手に気まずくなっていると見て良いだろう。
あれこれと考えながらもパンをオーブンに入れて、その間にコーヒーを入れた。
キッチンから溢れそうなほどに良い香りが漂い、起きてからまだ何も入れていなかった胃袋が空腹を訴えてくる。
飯を食えと言ってリビングに来るように促したものの、さて何を話すべきかと迷っている。
どうしてそんな夢を見てしまっているのかとか、具体的にどんな夢なのかとか、さっさと話しちまった方が楽になるんじゃねぇかと思う。
が、単刀直入に聞いたら流石に可哀想だろう。
アイツは性根が真面目だし、こちらに対して何処か神聖視している部分がある。
銀さんは下品な話題は嫌いだとか、銀さんは綺麗で崇高な精神を持つ女性が好みだとか、おいおい誰がいつそんな事言った?という事を勝手に思っているのだ。
チン、とオーブンが鳴り、パンが焼きあがった。
こんがりとしていてちょうど良い焼き具合だ。
冷蔵庫からジャムを取り出して、朝飯をダイニングテーブルに並べ。
椅子に腰を下ろし、ぼんやりとリビングの方を見ながら煙草でも吸っていようかと考えた時に、森田がキッチンにやってきた。
顔は洗ってきたようだが、パジャマのままだ。
「眼は覚めたか」
「はい…」
「じゃあ食うか」
促すと、森田は頷いて椅子に座った。
俯いたままこちらを見ようとしないのは、やはり居た堪れないからか。
いただきますと小さく呟く声。
それから、ちまちまとサラダをつつき始める。
彼の視界にジャムが入るように押しつつ、さてどうしたものかと悩んだ瞬間、そういえば昨日もこんな事を考えていたなと思い出す。
思わず喉を鳴らし苦笑を零すと、森田は怪訝な眼をしながらも、ようやくこちらを見てきた。
「銀さん…?」
「ああ、何でもねぇよ」
「………」
何か言いたげだったが、結局すぐにまた俯いて食べ始める森田を尻目に、自分も空腹を解消しようと箸を取った。
to be continued...
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2010.05.11
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