お兄様と屑妹
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
宿屋(中略)編〜 つづき のつづき のつづき
全ての明かりが点いた部屋は、柔らかな光に包まれ、躰の隅々まで見える。
もちろん顔の表情も。
頭を引き寄せられ、だんだんと近づくアッシュの双眸を見つめながら、ルークは触れる唇を喜んで受け入れた。
「んん……んふっ……ぅ」
「……、ルーク」
「……おに、さま……ん、ふ……ん、ん」
緩く口を開け、唇の間に隙間が無くなる程に合わせ、入ってくる舌に自分の舌を絡ませる。
舌裏を舐められて、表面もねっとりとなぞられ、ぞくっと背筋が震えた。
くちゅ、くちゅ、と水温が鳴り部屋の中で木霊し、苦しくなってほんの少し唇を離せば、唾液の糸が自分達の間に出来る。
しかし切れる前にまたアッシュによって唇が塞がれた。
「んふ……ふ……ぁふ、ん」
口腔をまさぐってくる舌に、気持ち良くて頭がふわふわとしてきた。
いつの間にか目を瞑り、遮断した真っ暗の中、触れられる感触がリアルに伝わってくる。
久しぶりの口付けは、とても甘い。
しかし優しい快楽に酔いしれていると、ぎゅっと乳首を摘まれ、ルークは悲鳴を上げた。
「ぅひゃんっ!?あ、やぁ……っ」
反射的に唇を離して上体を逸らしてしまい、躰を動かした結果、ずっと胎内に入っていたアッシュが内壁を擦ってくるのを感じ、忘れかけていた状況を思い出した。
中でどくどくと脈打っているアッシュの昂ぶりは、自分の中に入っているというだけで、もの凄い悦を与えてくる。
口の端からはキスで溜まっていた唾液が流れ、顎へと伝っていた。
乳首を摘まれたまま、先端をこりこりと捏ねられ、零れ出る白い液体を舐められ。
受け入れている入り口を含め、だらしなくそこら中からどろどろと流れる自分の液体があまり恥ずかしくて、顔が紅潮するのを止められない。
「ぅ……ぁ……ああっ、あう」
「なんだ、自分で動くのか?」
がくがくと震え、それでも逃れるように微かに腰を揺らしたルークの行動をアッシュは勘違いしているのか…それともわかっていて言っているのか。
楽しそうに笑みを零した。
乳房をやわやわと揉まれれば、ルークはひくりと躰を飛び上がらせ、また自分の中にあるペニスで擦ってしまう。
そしてまた躰が震え、また締め付ける。
そんな悪循環は、もう既に一度達してしまっていた躰には、かなりきついのに。
「ほら、もっと動け」
「や、やうっ……ふえ……無理だよぅ。こんなお腹いっぱい、入っちゃ……奥、まで……うう、んっ」
下から腰を動かすアッシュに、ルークはいやいやと首を振った。
手を付いていたベッドの、シーツを握り締める事でどうにか動くのを静止しようと試みる。
涙を零しながら、閉じられない口からはふ……と熱い吐息を零し、すぐ近くにあるアッシュの顔を見つめた。
もう、本当に可笑しくなりそうだった。
躰中が疼き、気持ち良過ぎて。
自分が自分である事を忘れてしまいそうな、何かに飲み込まれてしまいそうな、そんな感覚。
満たされているのだ。
いっぱいいっぱい、自分の全てが目の前の最愛の兄のものになっている。
そしてまた彼も、自分のものになっている。
自分を見つめてくれている。
「おにぃさま……気持ち、いい……んっぁ…………あ。ずっと、このまま……」
満たし続けてほしいんだ。
ずっとこうやって、繋がったままでいられたら、そうしたら二度と、離れなくて良いから……ずっと一緒にいられるから。
―――どうか、このまま。
しかしそんなルークの願いをよそに、アッシュは、チッと小さく舌打ちした。
「仕方無ぇ」
アッシュはつと呟いたかと思うと、柔らかな尻が歪む程に攫んだ。
え?と小さく声を出しうろたえ、まさかと思った瞬間にはそのまま躰を持ち上げられていた。
擦られる内壁に焦る暇も与えられぬまま、また一気に落とされる。
ぐりゅっと、抉るように奥の奥まで突き刺さってきたものは、快楽の許容を越えていて。
「ひやぅう!!??……や、やぁ!!そんなっ、激しく動かさないでぇっ!」
ぐじゅっ、ぐちゅっと、濡れている胎内から蜜が出て泡立つ程に激しく何度も腰を揺さ振られ掻き回され、緩やかなものから一気に強烈な快楽へと落とされてしまう。
自分では抑えられないどうしようもない施しに、高い叫び声が出て、見開いた眼から涙が飛び散る。
「あぅううっ!やだやだ、やっ、あああっ、い、い、イっちゃうようぅ!お、お兄様ぁ!」
「……もっと泣け、ルーク」
呟くアッシュの声は色っぽくて、それだけでまたぞくりと感じてしまう。
こんな間近で見つめられながら、胸を揉まれ、下からも突き上げられる度に快感が全身に走り抜け、本当にどうにかなってしまいそうで。
自分の中がいっぱいに広がる程大きな昂ぶりが埋め込まれ奥を貫かれ、そこを何度も突いたかと思えば、全体を擦られながらまた出て行く。
「ああ、あっあ、あぅあぅっい、いくっいっちゃうっ」
「駄目だ。先にイったら……仕置きだな」
「そ、そん、なっ……や、やめっ!駄目イっちゃう、動かなっ、でっ!や、あああっあああ!!」
言われた事に反論を試みようとした時にはもう、何をされても感じてしまって。
ずくんっ、ともう一度腰を落とされ奥を貫かれた時には、高まり過ぎた快楽によって、また全身を引き攣らせていた。
一瞬だけアッシュは顔を歪めた。
ふぅ……と小さく息を吐く。
ぱっくりと開き、ひくりひくりと収縮するルークの秘部からは、どろどろとした白濁液がごぷっと大量に出てきて己の下部を穢す。
いや、穢しているのはこちらか……と、アッシュは内心自嘲した。
顎を逸らしガクガクと痙攣を繰り返しているルークは、気付いていないのかもしれないが。
「…………ルーク」
「……あぅ……ぁー、ぁぁ……」
「……先にイったな?」
虚ろな眼をしたルークに声をかけると、ルークはびくっと跳ね上がり、それから緩慢な動作で己へと焦点を移していく。
そして泣いていた眼を見開くと、次には眉を寄せ、またぼろぼろと泣き出した。
「ふぇ……ご、ごめんなさっ、ぁう」
案の定、わかっていなかったようだ。
己もまたルークの中で達した事に。
奥に叩きつけた精液はルークの膣に溜まり、収まりきらなくて溢れ、ルークの愛液と混ざって出てきている。
だがこれだけ中は熱く、自分から既に大量の液体を出しているルークには、己が中で達しても把握出来ていない。
それにまだ己自身足りないのがわかる、射精したのにも関わらず、萎えていなかった。
随分と溜めていたな……と思いつつも、ルークの暖かく柔らかな壁に包まれて、気持ち良さに酔いしれる。
ルークもまだ張りつめているペニスを感じて、勘違いしたのだろう。
躰を震わせながら口元を押さえ、ごめんなさいと涙を流していた。
腕に寄せられて出来ている胸の歪みやら、ツンと尖った乳首からしとどと流れる母乳やら。
今すぐにまた揺さ振りたいと感じながらも、震えるルークに、湧き上がるこの気持ち。
ふつふつと沸いてくる加虐心。
「……仕置きだな。俺がイくまでずっと腰を振れ」
「!?な……む、無理……も、動けな…」
「駄目だ。俺をイかせろ」
「……ふぇ」
冷たく言い放つと、ルークは泣きながら困ったようにこちらを見下ろしてきた。
泣き過ぎているせいか、少し腫れぼったくなってしまっている。
その眼を見返しながら張り付いていた髪を梳き濡れた頬を撫でると、はふ……と気持ち良さそうに熱い吐息を漏らし擦り寄ってくる。
「ルーク……出来るよな」
「…っ……ん……おにぃさま…、俺の中……ずっと入っていて、くれる?お、俺を置いていったりしないって、ひく……ぅう」
「ルーク」
「連れて行って、くれるって……ぁぅ…や、約束……してくれる、なら……おれ、動くから…」
「ルーク……」
えぐえぐとまるで子供のように泣きじゃくり始めたルークに、言いようもない胸の締め付けを感じた。
ああ、寂しかったんだな……と。
元にしろ、今なお繋がりのある己のレプリカである彼女の心が、直に流れ込んでくる。
アッシュはやりきれなくなって、繋がったままの状態にも関わらず、ルークの後頭部を引き寄せた。
そしてベッドヘッドに寄りかかり半分寝そべっているような状態の、その上に乗ってくる細い躰を抱き締める。
泣きながらも己へと縋り、擦り寄ってくる彼女が、愛しくてたまらない。
「独りにしてすまなかった」
「ん……」
謝罪と共に、頭を撫でてやると、ルークはこくりと頷いて首元に顔を埋めてきた。
前に落ちている髪を掴まれ、それを口元へ持っていくルークをじっと見やる。
ルークは、はふと吐息を吐き、安心したように眼を瞑った。
もう、隠すべきでは無いのだろう。
今までは、己のものを人目にあまり晒したくないという気持ちと鬩ぎ合っていて直視しないように勤めていたが、こいつに事実を知った時どんな反応をされるのかと、臆病になっていたのかもしれない。
理由を告げられず、それでもあまり無理をさせてはいけないだろうと、連れて回らなかった。
けれどこのまま隠していても、いつかはわかってしまう事だ。
ならばいっそ事実を話してしまった方が、こいつは寂しがらなくて済む。
自分本位でルークを悲しませていた事に申し訳無いともう一度謝罪を口にし、アッシュはすぐそこにあるルークの頭に頬を寄せた。
「あと太るって事に対してだが、それは当然だ。これからもっと、腹が膨れてくる。妊娠しているからな」
さらりと。
殊更さらりと、あまり刺激しないように告げた。
埋めた柔らかなグラデーションがかった髪からは、甘く優しい匂いがする。
母となるべき匂い……そんな気さえしてくる。
「………………」
しかし、待っていても反応が返ってこない。
もしかして寝たんじゃないだろうな……この状況で。
それはまだ熱が冷めていない己にとってはとても困るのだが……というか折角意を決して人が話したというのに、聞いていなかったなんて情けないのだが。
と思ったら、ルークはのろのろと顔を上げた。
「お、お兄様と……俺の赤ちゃん……?おれ、の…中に……?」
「ああ。俺とお前の子供だな」
頷くと、うぇぇぇぇ……と泣き声を上げるルークに、アッシュは困ったように眉を寄せた。
こんなに泣いていると、明日は眼が開かなくなるんじゃないかと心配になる。
「鼻水垂れてるぞ」
「だって……ぅえっ」
人の髪の毛を掴んだままの手の甲で鼻を押さえ、ずびずびと鳴らすルーク。
その腕を取りどかせると、ほんの少し垂れていた鼻水を舐めてみた。
汗や涙とあまり味は変わらないかも知れない。
そう思い、舌で眦を辿り涙も舐めてみると、やはりあまり変わらなかった。
ルークはきょとんと眼を瞬かせ、そしてうりゅ、と潤ませる。
「きだらいのに……」
「かもな。だが今更だろう。既にもう…ここ……舐めてやってるのに」
「っう……ん、んぅ……ばかぁっ」
耳元で囁き、繋がっている小さな双丘の濡れた淵をなぞれば、ルークの胎内はまたひくひくと震える。
馬鹿とはまた随分な言葉をかけてくるものだと笑うと、ルークはむっと拗ねた真似をして、こてんと首筋に頭を乗せてきた。
そして、小さく呟く。
「でも、好き…………大好き。俺とお兄様の子供、凄く、嬉しい……」
「……言えなくて悪かった」
「ん…………俺の事、大事にしてくれてたんだな……おにい、さまの……気持ち。流れてくる」
自分の腹を撫でながら、ルークはふわりと笑う。
それはとても柔らかな微笑で。
「ありがと……」
心の奥に染み渡る音色は、ほんのりと甘かった。
「に、妊娠ーーー!??」
キーン、と耳に劈く程の声量に、アッシュは思わず眉間に皺を寄せた。
「煩ぇ。あいつはまだ隣で眠ってるんだから、静かにしろ」
「え、でもだって、嘘!ルークが!?全然気付かなかった……」
「私もです……」
「お、オイラも」
次の日、すやすやと寝入っていたアッシュは、控えめのノックで眼が覚めた。
己の腕の中には、これまた気持ち良さそうに眠っているルークの姿。
やはりというか、眼の下がだいぶ腫れている。
そんな妹を抱き締めたまま、起こさないようになんだと適当に声をかければ、朝食を一緒に食べないかという、ギンジノエル兄妹からの誘い。
そういえば昨日の昼辺りから何も食べていなかったなと、ルークは寝かせたまま己だけが隣のアニスの部屋へと入った。
料理上手だと評判のアニスの、今朝の眩しい日差しに似合った、爽やかな朝食を頂きながら会話をしていたら、いつの間にかまだ眠っているルークの話になったのだ。
もう本人には告げているし、己も当分は仕事を全部キャンセルしてやろうと意気込んでいたので、いつの間にやら現在ダアトのトップにいるこの大詠師のガキには伝えておく必要があった。
「そういうわけで、当分俺は仕事やらねぇからな。全部ヴァンを使え」
「ええ!それは流石に、主席総長がきついんじゃ……それにアッシュ、英雄だよ?自分の立場わかってる??」
「じゃあ、またあいつを一人にしろと?」
「それは……」
う、と息を詰めるガキに、アッシュは鼻で笑った。
今の今まで、何故ルークを連れて行かないのかと言っていたのは、アニスの方だ。
寂しがっているから何とかしろと、他の奴等にも随分と言われた。
しかし妊娠していたとわかれば、連れて行かないという事に対しての文句は言えない。
アッシュやヴァンや、他の六神将達の仕事がどれだけハードであるか、報告書を見れば検討がつく筈だ。
「それにしても、アッシュさんがルークさんを連れていなかった理由が妊娠だったなんて…お祝いしなきゃですよね。あとで何か買ってこよっと」
「そうだな、オイラも何か……そういえば結婚式は上げるんでしょうかね」
「英雄様と聖女様の結婚式か……とても華やかなんだろうなぁ」
「…………ノエルにはまだそんな相手は、いない……よな?」
「やぁだ兄さんったら!」
ばしん!と思いっきりギンジの背中を叩いたノエルは、きゃ、と頬を染める。
危うく朝食に顔を突っ込みそうになったギンジは、え、何その反応!?と素っ頓狂な声をあげノエルを見返した。
……よくわからない兄妹だ。
しかしまぁそれなりに仲は良いのだろう。
昨日バチカルから、このケセドニアに一直線で来れたのも、ギンジとノエルがそれぞれに乗っているアルビオールに、互いの居場所がわかるようにと探知機が付いているからだった。
アッシュは目の前にあったものを丁寧にかつ、迅速に平らげると、さっさと立ち上がる。
「何処行くの?」
「あいつが眼を覚ました時に傍にいてやらないと、またびーびー泣くからな」
「あそ……」
このバカップルめ……というアニスの呟き声が思いっきり聞こえたが、アッシュは無視した。
頭の中は既に屑妹の事でいっぱいだ。
両親への報告から結婚式やら子供の事まで、一気に計画が練られていく。
しかしふと思い立ち、まだテーブルに座っている三人へ振り返った。
「とりあえず、一週間程はあいつの旅行に付き合うさ。のんびりとな。足が必要だから帰れとは言わないが?……邪魔、すんじゃねぇぞ」
そう言った英雄の背中は、聖なる炎どころか、煉獄の炎を背負っていたとか……。
...end.
←
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
優しい感じに。
お互いに必要としながら生きていければ良いと思いつつ…。
2006.10.17
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
←Back |
|