お兄様と屑妹

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  スパ(中略)編〜 つづき




「気持ち良い〜」
「そうだな、たまにはこういうのも悪くは無い」
「だろ?良いよなプール。俺、初めて泳いだ時なんて、すげぇはしゃいじゃって。皆に笑われちゃったよ」


 アッシュが同意してくれた事が嬉しくて、ルークはえへへと笑みを零した。
 初めは何だか嫌そうな顔をしていたので、もしかしてプール嫌いだったりとか、自分と一緒にいたくないのかとか、色々と悩んだけれど。
 でもこうして付き合ってくれるアッシュに、凄く歓喜が湧き上がる。

 女になってビックリしたりしたけれども、大好きなアッシュが自分に優しくなってくれて、しかも一緒にいてくれるなんて。
 ジェイドは一生このまま男には戻れないだろうと言っていたが、むしろ凄く嬉しかった。

 もっと女らしくなれれば、アッシュはもっと自分に優しくしてくれるかな?と思い、この水着も着てみたりもして。


「なな、この格好、似合ってるかな俺」


 自分が選ぶ服は趣味が悪いかもしれないが、これならばアッシュも喜んでくれるかもしれない。
 そう思い、ルークは一度プールの壁まで着いた時、アッシュに声をかけた。


「お兄様……?」


 だがルークと同じように下に足を付けたアッシュは、ルークの姿を見るととたんに、ダンッと壁に手を付いた。
 ルークはびくっと肩を竦め、おそるおそるアッシュを見上げる。
 怒ったような困ったような、そんな表情がすぐ近くにあった。

 お兄様って格好良いな。
 以前の自分と完全同一だなんて嘘みたいだ。
 なんか切羽詰ったみたいな表情がとても……色っぽくて、躰とかも凄く男らしくて、やっぱり格好良い。
 しかも濡れているせいか、いつもよりも男らしい色気が……って、違う違う、そうじゃないだろ俺!


「えっと……」


 間近にあるアッシュの姿に顔を染めつつ。
 しどろもどろになりながらも何かあったのかとルークが聞こうとする、その直後にアッシュは肘を付いていない方の手でルークの躰を指差した。
 その場所を自分も見下ろすと。


「……あっ」


 アッシュの表情の意味がわかり、ルークは顔を真っ赤に染める。

 水着がずれて、片方の乳首が露わになっていたのだ。
 実はルーク自身、この躰を抱くアッシュ以上に、女である自分の躰をまだ見慣れていなくて、慌てて元に戻そうとしたのだが。


「……屑が」
「ご、ごめんなさ……やっ!?」


 謝る前に、アッシュの指できゅっと乳首を摘まれて、ルークはひくんと躰を揺らした。
 反動に、ちゃぷんと水面が揺れて水が飛ぶ。


「あ、や……ぁん……お、兄様……ぁ」
「ったく、そんな水着でうろちょろされたら、我慢が効かねぇだろう。しかも俺以外からの野郎から貰ったもんを嬉しそうに着るんじゃねぇ」
「ひっ……あ、んぁ……」


 女とはこういうものを喜んで着るのだろうと勝手に思っていたルークは、施される愛撫に喘ぎながらも、アッシュの言葉にショックを受けた。
 ……怒っているのだ、アッシュは。

 くにくにと乳首を押し潰されたり、自分とは違う無骨で大きな掌で乳房を揉まれたり。
 気持ち良いけれど、何だか情けなさを感じてしまったルークは、ひぐひぐと涙を流し始めた。


「う、ごめ……俺、よくわかんなく、て……ぁ」
「…………屑が」
「ふぇ?」


 ばしゃと水が鳴り、下に付いていた足が水中に浮く。
 背中や頭にアッシュの腕が回り躰が密着して、出てしまっている乳首がアッシュの男らしい胸板に擦れて、突起が上に向いてしまう。
 そして片足が彼の腕によって水中から抜けて、外気に晒されるくらいに上げられ肩に乗せられ、股を広げさせられ。
 こんな不安定な状況では自分の躰を上手く支えられなくて、ルークは自ずとプールの壁へと背中を押し付けた。

 大きく広げた股に温水が流れ込んで来て、ぱっくりと空いてしまった入り口から中まで入ってきて、泣きそうに顔を歪める。


「や、やだっ……水、がっ……ゃ」
「……ルーク」


 耳元で名前を囁かれて、ルークはか細い声を漏らした。
 少し互いの躰に隙間が出来ると、次にはアッシュの唇がルークの唇を塞いでくる。


「ん、ん……んふ……んん」


 ……ああ、もしかして慰めてくれているのだろうか。

 舌を舐められ、くちゅりと唾液の混ざる音が鳴る。
 そのままくちゅくちゅと貪られて、気持ち良さに躰中がふわふわしてきた。
 歯列をなぞられ、下唇を食まれ、また舌を口腔に入れられて。


「ふ……っぁは」


 唾液の糸を伸ばしながら互いの唇が離れると、そのまま二の腕から、肘へ、手首へとアッシュの指が這っていく。
 それだけで背筋がぞくぞくとして、ルークは躰を震わせた。
 すでに眼は潤んでいて、ぼんやりとアッシュを見る事しか出来無い。

 指先をアッシュの舌がゆっくり舐める。
 ルークは、耐え切れずこくんと咽を鳴らした。


「ぅ……ぁ……」


 指を咥えられ、舌で舐めながらまた出され、ちゅ、と吸われ。
 そんなアッシュの顔を見ていると、ふいに横目で視線を返され、そしてアッシュは……にやり、と笑った。


「あっ……あ、お兄様っ、や、」


 やばい、何だか躰の奥が熱い……疼いちゃう……よ。

 先程から大きく広げられた場所が、水着の下でひくひくと収縮し始める。
 早くどうにかして欲しい。


 早く、早く。


「あぅ、も、も……中、お兄様の入れてっ!可笑しくなっちゃうよぉ!!」


 疼いて仕方無い躰を持て余し、ルークは泣き叫んだ。
 入り口が熱くて水が入ってきているのに中も熱くて、でも自分ではどうすれば良いのか全くわからない。

 涙が零れ、それでもアッシュを見つめる。
 けれどもアッシュは、何故か全然動かない。

 もしかして自分から求めてしまった事を浅ましいと思われたのか、嫌われてしまったのか、と悪い方へと思考が行ってしまい、ルークはうぅ、と涙を零しながら唸る。

 すると視界の隅で、ようやくアッシュが動いた。


「お兄……ひぁあああっ!?」


 つ、と水着の下を引っ張られたかと思ったら、ついでズブズブズブと勢い良く胎内に突き入れられるものに、ルークは悲鳴を上げた。
 いまや両足を持ち上げられ、壁に押し付けられ、中へ中へとアッシュのペニスが埋められていく。
 熱いものに内壁を思いっきり擦られ、媚肉を割り広げられ、それだけでびくびくと感じてしまう。

 ようやく全部が収まった時には、ルークは堪らずぼろぼろに泣いていた。


「あ、あぅ……あぅ……」
「……ったく、あんな誘い文句、どこで覚えやがった」


 吐き捨てるようにアッシュは呟き、ルークの鼻に自分の鼻を摺り寄せてきた。
 ルークはいきなりの快楽に躰を大きく震わしながらも、アッシュに求めてもらえた安堵に、そして求めていたものを貰えた喜びに、ほわりと笑顔が浮かぶ。


「おれ、お兄様が欲しくて……それで……ああっ、や…お兄様、動かない、で……水が入って、中、冷たい、ようっ」
「我慢しろ。それに……お前の中は熱いぞ?」


 アッシュはルークの躰を突き上げ、ぐちゅ、ぐちゅ、とルークの胎内に快楽を施していく。
 激しい上下運動に耐え切れずアッシュへ腕を伸ばしたルークは、しがみ付くついでにアッシュの頭に巻かれていたタオルを掴み、ずり下ろしていた。
 アッシュの紅い水に濡れた髪がパサリと自分の元へと落ちてくる。
 美しい彼の姿に見惚れつつも、自分の胎内がひくひくと動くたびに、その中で壁を押し上げてくる熱いものをリアルに感じる。


「あ…ああん……お兄様の、形わか……おっきい……あっあっ」
「く……はっ、この、屑……が」
「ひゃあ??や、やっああっ、あっ!」


 悪態を付くアッシュに一段と早く突き上げられ、奥の奥まで届き、ルークはびくんびくんと腰を震わせた。
 ちゃぷちゃぷと水面に波紋をいくつも作りながら、アッシュのもので疼く場所をどこもかしこも擦られ、突かれ。
 むき出しだった乳房を揉まれ、乳首を引っ張られて、引っ切り無しに嬌声が漏れる。

 肉を割り、ぐりゅっと最奥を何度も突き刺してくるもののスピードも速くなり、蓄積されていく快楽に耐え切れなくなってしまう。
 ガクガクと揺さぶられて、もう訳がわからないくらい気持ち良くなって。


「ふぁあ、ああ、だめ、も……イっちゃ、あぅ……んああっ!」
「っ……」
「ああっ……熱いよぉっ、ぁ、あっ」


 急性的に与えられた快楽に耐え切れず叫びを上げたルークは、アッシュの色っぽい呻きを耳元で聞きながらビュクビュクと奥で吐き出された精液を受け止め、何度も躰を撓らせた。








 荒い呼吸を繰り返し、ピンと伸びた爪先から力が抜けていく。
 二人はそのままの格好で、そして無言のまま、どちらからともなく唇を寄せ合った。

 舌を絡め、唾液が混ざり合い、くちゅくちゅと互いの口腔を行き来する。
 浮かされた快楽によって流れた涙は、ルークが眼を瞑った事によっていくつも頬へと伝い落ち、水面がぽたぽたと音を奏でる。


「んん……ん、ん、ん…んむ……はぁ」


 唇が離れ、名残惜しげに舌も離れ、つーと伸びた唾液もぷつんと切れて下に落ちた。
 ちょうどその時に、ルークの掴んでいたタオルは完全にアッシュの頭から離れ、けれどもタオルを握ったままルークはまだアッシュにしがみ付いていた。

 いや、むしろしがみ付いているしか無かったと言った方が良い。


「……お兄、様……?ぁの……そろそろ」


 抜いて欲しいのだけど。

 また感じそうになってしまい、もじもじと下半身を揺らしどうにかしてアッシュの抱擁から抜け出そうとする。
 だが、如何せん両足ともアッシュの肩やら腕やらに引っかかって持ち上げられている状況なので、たいした効果も出ない。
 むしろ自分の双丘が咥え込んでいるアッシュのものが中で大きくなるのがわかって、ルークは顔を赤くした。
 ちらりと目線を自分達の間に向ければ、咥え込んでいる場所が水面を通してゆらゆらと揺れて見えてしまい、今度こそかぁっと真っ赤に頬を染め上げる。


「……ぁ、あの」
「煩い。ちょっと黙ってろ」
「ぁぅ」


 先程までの甘い空気はどこへやら、冷たく言い放たれて、ルークは押し黙った。
 すぐそこにある顔をちらりと見上げると、アッシュは眉を寄せて、何か考え事をしているようだった。
 一体こんな状況で何を考えているのはまでは、わからない。

 しかし黙っていると、躰の方へと意識が行ってしまって……特に、繋がっている部分にまた熱を感じてくると、自分もまた意識をしてしまって。

 あ、ヤバイかも……と思った時には、また躰が疼き始めた。
 ひく、ひく、とアッシュのものを締め付けてしまったのは、もちろんアッシュに伝わっているに決まっている。

 アッシュは熱い息を一つ吐いた。


「とりあえず、このまま向こうまで歩くからな」
「え?へ??あ、あぅ!?」


 いきなり壁から背中が浮いたかと思えば、中に入れられたままの状態で、アッシュはルークを抱え横へと歩いていった。
 まるで抱っこされたようにアッシュの首にしがみ付いたまま、歩く振動に胎内を擦られ、ルークは躰を震わせる。


「あ、ああ……ん……な、んで」
「中に出したもん、プールに漏れたらヤバイだろうが。ここからじゃ、お前を抱えたまま上がれねぇんだよ」
「ぅ……」


 そう言われると、確かに色々とヤバイような気がした。
 というか、貸し切りとはいえ普段は公共の場であるこの場所で、セックスした痕跡を残してしまうのは恥ずかしい。

 でも、この抱えられている状況もかなり恥ずかしいんですけど……。

 せめてすぐにでもプールサイドに上がれる場所だったら良かったのだが、生憎と飛び込み台がいくつも並んでいて、自分を前に抱えたまま上がるには高過ぎる場所だった。
 だからこそ壁に寄りかかってセックスしていたのだが、それでもせめてもう少し脇の方でやっていれば、こんなにも揺り動かされなくてすんだと思うと、この状況に情けなくなってくる。

 挙句に、お前も漏れないようにどうにかしろ、と言われ。


「やぅ、やぅぅ……無理ぃ、あ、あっ」
「っ……喘ぐなっ」
「だ、だってぇ……あぅぅ……」
「締め付けるな!」
「ふぇぇぇ」
「っく……んな声で耳元で泣くな……ったく。すぐにまた目いっぱい泣かせてやる」
「お兄様……ぁっ、あ、ああっ」
「……屑が」


 アッシュが歩くたびにルークの躰を動かしてしまい、それにルークが感じてしまい。
 そして中の締め付けに、アッシュはまた己のものを勃起させてしまい、それにまたルークが感じて泣き。

 ようやくプールサイドへ上がれた時には、またセックスし始めてしまった兄妹であった。



 ちなみにセックスの間ずっと、ルークの手にはアッシュのタオルが握られていた……。















 こんこんとノックをすると、中から「どうぞ」という声が帰ってくる。
 鍵は開いているらしく、ドアノブを回すとすんなりドアは開いた。

 部屋の中には、ソファに座って本を読んでいたジェイドと、テーブルに乗って紙に落書きをしているミュウがいる。


「お帰りなさいガイ」
「お帰りなさいですのー」
「ただいま。俺、この部屋で良いんだよな?」


 一階のフロアで場所を確認してきたので間違える事は無いのだが、と苦笑する。
 するとジェイドも、こくりと頷いた。


「ええ、貴方はここですよ。それとも、他の部屋に行きますか?」
「はは、殴られるから遠慮しとくよ」


 確認したらこの右の部屋は女性達三人の部屋、そして左は最近とても仲良しなアッシュとルークの部屋だった。
 ガイは中に入ると、二つあるうちの片方のベッドに腰掛け、剣やら手袋やらを外していく。
 ジェイドは本を閉じ、ガイの方へと声を掛けた。


「買い物はもう終わったんですか?」
「ん。ああ、もう大変だった……なんで女性ってのは、あんなに買い物好きなんだろうな……」
「貴方の音機関が好きなのと、たいして変わらないですよ」
「そう言われると、反論が出来ません」


 たはは、と頭を掻くガイに、ジェイドは笑みを浮かべる。

 最近……特にアッシュとルークが共にいるようになってから、ジェイドも、そしてガイもこうして笑うようになっていた。
 多分、ずっと見守ってきたからだろうと思う。

 レプリカを生み出したジェイドはもちろん、ガイもまた、幼馴染としてあの二人が幸せそうにしていると嬉しかった。


 皆それぞれに気付いていたのだ。
 ルークが消えるかもしれない、と。

 その事を本人は隠しているつもりでいたのだろうが、全くもってどこも隠されてはいなかった。
 浮かべられる笑みは、とても儚くて、見ていると胸が締め付けられて。

 でも今のルークの笑顔は、本当に明るく、そして華やかだった。
 生きている喜びを噛み締めている、そんな表情。

 そんな顔をするルークと、そしてルークを救ったアッシュと。


 二人が幸せであれば良いと思うのは、見守ってきたものとして当然ではないか。
 きっと親心っていうものなんだろうなぁ、とガイはこっそり苦笑する。



 テーブルの上で、ちょうど落書き……もとい絵日記を付けていたミュウは、その行為が終わったのか「お腹空きましたの」と突っ伏した。
 ガイは笑顔を浮かべたまま、口を開く。


「そろそろ夕食を取りに行こうか?女性達やアッシュも誘って」
「みゅうう、賛成ですの、夕食ですのー!」
「そうですね。ではレストランにでも行きますか」


 ジェイドの声に、ガイは頷き、先程来たばかりの腰を上げた。
 ミュウも嬉しそうにテーブルから飛び降り、ジェイドもその後をついていく。

 廊下に出たガイは、まず左隣の部屋のドアをノックしようとして、だがすぐにジェイドに止められた。


「そこは、今不在ですよ」
「ん?何処かに行っているのか?」
「ええ。スパで遊んでます」
「あー……それは。当分は戻ってこないんじゃないんじゃないか?ここのところ、毎晩だな」
「仲が良いんですよ……とても」


 ジェイドのここ最近の穏やかな言葉に、ガイは「そうだな」と同意し、笑った。





   ...end.



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とりあえずお父さんなジェイドと、お母さんなガイと、赤毛兄妹。

2006.06.24
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