お兄様と屑妹

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  デート(中略)編〜 つづき の つづき の つづき




 どうしてこんな事になっているのだろう。

 どうして、こんな……。


「ゃ、やだ……ぁ、お兄様っ……」
「ああ?テメェは服を着たまま風呂に入る気か?良いから、じっとしていろ。全部脱がしてやる」


 後ろから抱き締められて耳元で囁かれると、ぞくりと背筋が震えて躰から力が抜けてしまう。

 上半身はとうに裸にされていて、しかも胸を触られていた。
 自分の躰でありながら、見た目は自分のものと思えない女の乳房。
 しかしアッシュの掌に包まれると、触れられている感触や暖かさはしっかり自分に伝わってくる。

 揉まれて、乳首を摘まれて、こねられて。
 そうやって愛撫されると、ぞくぞくとした快楽が沸き上がってきて、躰が痙攣する。


「ふぁ……やぁ、ん……ぁ……駄目、ダメお兄様ッ、そっちはダメだっ!」


 ルークは慌てて巻きスカートを押さえた。
 そのまま脱衣所から逃げようとしたけれど、後ろから抱き締められていて叶わない。
 挙げ句には手をどかされ、留め金を外されていたスカートはぱさりと床に落下してしまった。

 露わになったパンツは、アッシュが服を買ってくれた時と同時に購入したもので、自分で選んだシンプルで白いものだ。
 それでもやはり、そこに今まで付いていた男の性器が無くなってしまっているという事実に、打ちひしがれてしまう。
 本当に女の躰をしているのである。

 だがそんな事は、次に来た襲撃によって、一瞬にして頭から追いやられてしまった。


「ひっ!?……ゃあ、あ……、やだお兄様、そんなとこ、ぁ、触んな、でぇっ……!」


 パンツの中にアッシュの手が入ってきて、女性の性器を直に触られた。
 秘所を掌全体で覆われ、ぶわりと伝わってきた感覚に腰が震える。

 しかも女の秘所には割れ目があるようで、その間に指が挟められた。
 ぴちゃり……と、ぬめった音が鳴る。


「ここ、もう濡れてるじゃねぇか」
「ぁあ、あんぅ……」
「女らしく、中から漏れてトロトロだ。胸を弄られて、気持ち良かったんだろう……?」


 卑猥な言葉を並べられ、クスリと笑われて、ルークはあまりの羞恥から顔をかぁっと赤くした。
 何だか女になった事が今更ながら情けなくなってきて、じわりと涙が浮かんでしまう。


「ぅう……う、やだアッシュ、やだぁ」
「こらルーク。お兄様、だろ」
「ぉ、お兄様……お願い。も、手……どかしてっ、あぁ」


 秘所に指が宛てられたまま、ふにふにと双丘を揉まれる。
 もう片方の手も相変わらず乳房を揉んできていて、どんどんと躰が熱くなり、おかしくなってしまう。
 足がガクガクと震えて、立っていられなくなってくる。

 そうすると下肢を覆うアッシュの手に体重を掛けてしまい、余計に双丘の間に指が食い込んだ。
 ぬちゅり、と余計に蜜が零れてアッシュの指を濡らす。
 アッシュはこの躰を支える為にか手の位置をずらし、……そして。


「っふぁああん!?」


 ずぶり。

 中に入ってきた。
 指が、俺の躰の中に。

 しかも、くちゅくちゅと緩く掻き混ぜられる。


「……や、何そこっ、やだぁ!……ああ、あ、……あぅぅ」
「まさか、女の躰の構造を全く知らねぇわけじゃねぇだろ?膣と言って、この穴が男のペニスを受け入れる場所なんだ」


 もちろん知識はある。
 しかし、わざわざそんな場所があるなんて事をわからせなくたって良いじゃないか。
 そんな場所に指を入れて、掻き回さなくたって。


「ぁぅう、あ、ぁ……あんっ、あんっ」


 ああ、なんだろう。
 弄られている場所から、何かが沸き上がってくる。
 ひくひくと蠢き、アッシュの指を締め付けて。

 下肢が疼く。
 ぞくぞくとしたものが、全身を掛け巡る。

 そのせいで声は止まらず、震えて躰に力も入らなくて、背後から抱き締めてくるアッシュに完全に寄り掛かってしまった。
 そして余計に胎内を嬲られる。

 くちゅり……、くちゅり……と、淫らな音が小さな脱衣所で木霊する。


「や、ぁ……やだよぉ、お兄様っ、なんか来ちゃ、ああ、あ、あ……っ」
「ルーク、気持ち良いだろう?」
「ぁ……イィ、気持ち、い……っ…ふぁ……、ぁ、んあああっ!」


 中の壁を指でさすられて、そこが凄く気持ち良くて。
 ルークは前に回された腕に縋って、中の指をきゅううと強く締め付けながら、躰を大きく撓らせてイった。

 暫くは痙攣が続く。
 どうにか躰から力が抜けた時には、頭を起こしている事も出来無くて、くたりとアッシュの胸板に預ける。
 すると、ようやく床に座らせて貰えた。
 床の冷たさが、心地良く感じる。

 はぁ、はぁ。

 呼吸が儘ならない。
 いつの間にか涙も滲んでいた。


「お兄、様……?」


 ぼやけた視界にアッシュの顎が映る。
 何をする気なのか、アッシュはルークの上体が倒れないように胡坐を掻いた上に座らせ、背を支えたまま両手を前に持ってきた。
 それが、ルークのパンツに掛かる。


「ゃ、やだ……」


 腰の両サイドに指を掛け、ゆっくりとずり下ろされていく。
 すると、先程までアッシュに弄られていた部分を覆う焔の恥毛が現れた。

 ルークからもアッシュからも、指を入れられていた場所までは見えない。
 しかし陰毛はしっとりと濡れているし、パンツが太股まで下ろされると、とろりと透明な糸が引いた。


「うぅ、ぅ……」


 恥ずかしいなら見なければいいのに、ルークは自分の躰から眼を反らせなかった。
 女性らしい丸みを帯びた躰に、膨らんでいる乳房と、弄られてツンと立った乳首。
 それから。


「ぁあ……、や」


 パンツを脱がす為にアッシュに片足を膝裏から持ち上げられ、足からパンツが引き抜かれた時。
 股を大きく広げる事となり、恥毛の下の濡れた双丘の割れ目までが見えてしまった。
 照明の淡い光によってテラテラと光沢を放っているそこは、羞恥と同時に興奮を呼び起こす。

 自分の躰だけれど、ルークの意識はまだ自分は男という方が強かった。
 しかし興奮しても、今までの感覚とは全く違う。
 ペニスは外にあるもので、疼くのも外部だった。

 でも今は、躰の中だ。
 弄られていた入り口から胎内の奥までが、ジクジクと疼きを発する。


「ぅう……俺、も……ゃだっ」
「ルーク?」
「おかしく、なっちゃ……こんな、奥がっ……奥っ」
「……女の躰だからな」
「ぅええ〜……、もぅ、変になるっ」


 混乱した。
 訳がわからなくて、ぼろぼろと涙が零れた。

 精神と肉体は繋がっているのにバラバラのようで、なのにやはり繋がってしまっていて切り離せない。
 男と女が混在して、自分という存在がわからなくなる。

 ぐずぐず泣いていると、いつの間にかパンツを脱がされ全裸にされていた。
 そしてやはり、いつの間にか服を脱いでいたアッシュに抱き上げられる。

 慌ててアッシュの顔を見上げると、アッシュは視線に気付いて声を掛けてくれた。


「安心しろ。そんな事、わからなくなるくらいに可愛がってやる」
「お兄様……ん、」


 ちゅっと、唇にキスをされる。

 ああ、どうした事だろう、今度は心臓がバクバク鳴り始めた。

 だって、アッシュが微笑んだ。
 凄く優しい声をくれた。
 こんな扱い、今までされた事が無くて、どうすれば良いのかわからない。


 風呂場に入ると、浴槽に張られた湯は、すでに泡がたくさん立っていた。
 その中にゆっくり躰を沈められる。
 それからすぐにアッシュも入ってきて、またさっきみたいに背後から抱かれる形となった。

 二人入るには少し小さいけれど、密着すればあまり気にならない。
 泡がたくさんで躰も見えないから、少しずつ躰の興奮も収まってきた。
 ただちょっと……お尻辺りにアッシュのペニスが当たっているのは気になるけれど。

 でも、湯の温かさが心地良い。


「さてと……頭からで良いよな?」
「う?ぁ、うん」


 一瞬何を言われたのかわからなかったが、理解してすぐに頷いた。
 そうすればアッシュは浴室に備え付けられていたシャワーからぬるま湯を出し、頭に掛けてくる。
 髪が濡れると今度はシャンプーを手に取って、女になったと同時に長くなってしまったルークの髪を洗い始めた。

 優しい手付きでマッサージするように洗ってくれるから、ついつい酔いしれてしまう。
 生え際から毛先まで、揉むように全部きちんと洗ってくれて。
 五分くらい掛けてもらった。

 それからアッシュは自身の髪も洗い始める。
 ルークを洗っていた時とは違ってわしゃわしゃと乱暴な手付きで、しかも速攻で終わらせた事に、やっぱり自分は丁寧に扱ってくれたんだなぁと嬉しくなった。

 そんなふうに、心がホカホカになっていると。


「ひゃ!な、何……」


 ぼんやりとしていたら急に何かが躰を這っていって、ルークは慌てて背後を振り向いた。
 嗜めようとしただけなのだ。
 しかし。

 どくん。

 と、心臓が大きく跳ねる。

 ただアッシュを見ただけである。
 だが首筋から胸板へと流れる滴や泡と、しっとりと濡れた姿に眼が反らせなくなってしまった。

 ルークからじっと見つめられている事に気付いているのか、いないのか、アッシュは手に持っていたものを掲げた。


「何って。躰を洗うだけだが」


 彼が持っていたのは、躰を洗う為のブラシだった。
 毛先が柔らかく肌を洗うのに適した、オーソドックスなブラシ。

 始めはビックリしたけれど、肌を撫でられ綺麗にされてくれる感触は不快ではなくて。
 腕から手先、首から背中、胸元、足へと這わされていくブラシは時々くすぐったい。


「ははっ、そこ駄目。お兄様、あは」
「こら、大人しくしろ」
「だって……あはは」


 笑っていると、アッシュもクツクツと咽を震わせ始めた。
 二人で笑い合う声が浴室に反響する。

 頭を洗った時と同様、ルークを洗い終わるとアッシュは自身を洗い始めた。
 それくらいは俺がやってやろうかと声を掛けようとしたけれど、殆ど身動き出来無い状況にすぐに無理かと悟り、諦める。
 後ろでアッシュが洗うのが自分にも伝わってきて、またちょこっと笑ったりして。

 良いなぁと思った。
 こうやってアッシュと笑える日が来た事に、嬉しくなった。


 だがルークはすっかり失念していた。
 そもそもアッシュが優しくなって、こんな状況になった原因を。
 喜びに浸りすぎて、自分が現在は女の躰であり、異性である男に抱き締められているという事を。

 思い出したのは、アッシュの指が再びルークの胎内に入ってきた時だった。
 へらへらと笑みを浮かべていたところに唐突襲い掛かってきた衝撃に、ルークは眼を見開き咽を引き攣らせる。


「ひ、ぃっ?」
「ここも、綺麗に洗ってやるからな」


 アッシュはクスリと笑い、さも躰を洗う一環のように言う。

 けれど、ルークの口からは先程のように笑い声は出てこなかった。
 施される愛撫に、風呂に入る前の感覚を思い出して全身が震える。


「あ、あぁ。やだお兄様、そこはもうっ」
「屑が。素っ裸な女を腕に抱いて、男が何もしないなんてあり得ねぇだろ。それに……何もわからなくしてやるって言ったよな……?」
「そんなっ、や、お湯がぁ」


 胎内を指で広げられ、隙間からお湯が入ってきた。
 中でぐぷぐぷと鳴り、熱さや施される愛撫に、躰はすぐに火照る。


「さっき溶かしたからか、もうぐちゃぐちゃだな。ほら、また中から蜜が……」
「ふぁ、……言わないでっ。ぅう、も……ダメ、ダメッ」


 逃げようとした。
 足を浴槽に付けて、立とうとした。
 実際、腰を浮かす事が出来たのだ。

 しかしすぐに引き寄せられてしまった。
 ……だけなら、まだマシだったかもしれない。


「ひぃ!?ぃ、いいっ!?」


 ずぶり、と何かが入ってきた。
 膣を割り広げて、奥の奥まで一気に埋め込まれる。

 痛かった。
 痛くて、涙が零れた。
 自分の中にでかいものが埋め込まれている、その感覚に付いていけなくて、ガチガチに躰を硬直させて泣いた。


「ぅう、う、・・・う〜」
「っ・・・・・・痛い、か?」
「う、うう」


 囁かれるつらそうな声に微かに頷くと、お腹とか太股を優しく撫でられる。
 うなじや肩にキスを落とされる。
 乳房を柔く揉まれて、そっと抱きしめられて、またお腹をさすられた。
 そこに、アッシュのペニスが埋まっているのだ。


「ルーク。少しずつ、力を抜け。出来るよな?」
「ん、んく・・・ぅ、ん」
「息、吐いて。吸って・・・・・・吐いて」


 アッシュの言う通りに呼吸を繰り返す。
 すると徐々に痛みに慣れて、少しずつ緊張させていた躰から力が抜けていった。
 埋められたペニスを締め付けていた胎内も弛んでいき、アッシュもふぅと熱い息を吐く。


「気持ち、良いな……」
「ふ、ぁあ……ぅ、お兄、様」


 胎内に入っているアッシュを、やわやわと包み込む自分の躰。
 暫くすると、じくじくと痛む中から痺れが沸き上がってきた。
 それが徐々に、快楽へと変わっていく。
 疼き、くんっくんっとアッシュのペニスを嬲り始める。

 どうしよう。
 なんだか、気持ち……良い、かも。


「ルーク、もう大丈夫か?……良いなら、動かすぞ」
「う、ぅん……」


 頷くと、アッシュはルークの腰を掴み、動かし始めた。
 ちゃぽんちゃぽんと風呂の湯が揺れ、胎内のペニスも抽出が繰り返される。

 躰を浮かされて、そして引き寄せられて。
 何度も奥を突かれて、ルークはガクガクと躰を震わせた。


「ふぁ、ああ、あっ」
「くっ……う」
「はぅう、う……んんっ、お兄様、あ、お兄っ、あ、あああっ」


 ドクンッ、ドクンッ。

 アッシュのペニスが痙攣し、胎内にとてつもなく熱いものが叩きつけられた。
 あまりの熱さと気持ち良さに、ルークは嬌声を上げる。

 ギクギクと腰を揺らし、ペニスを締め付けて。


 そのまま、ふぅと意識が遠退いていった。















 ぼんやりとしていた視界が、徐々にクリアになる。カーテンの隙間から差し込んでくる光に、朝かと呟く。

 何度か瞬きし、アッシュはあたりを見渡そうとした。
 だが横を向いた途端いつもはない他人の寝顔があって、思わず眼を見開き、息を詰まらす。


「……ぁー」


 そういえば昨日は、ルークと一緒に寝たのだったか。
 ここに至るまでの経緯を思い出し、アッシュは朝からハァと甘い吐息を吐いた。

 気持ち良さそうに眠っている顔をまじまじと見るも、起きそうにない。
 しかも触れ合っている素っ裸の躰は、女体のままだ。顔の輪郭は丸いまま、確認のためにと触ってみたら、乳房も消えていなかった。
 柔らかいままだ。

 今日には戻ると思っていたのに、全く変化が見られない。

 横で眠る躰を抱き寄せ、しっとりとしたなだらかな躰を両腕で包んだ。
 アッシュも裸であったが、昨日さんざんセックスしたので、欲望は潜んだままだ。


「おいルーク。起きろ」


 声をかけて乱れた髪を梳いてやれば、ルークは小さく身じろぎしたあとにゆっくりと眼を開けた。
 大きな瞳が現れ、焦点がこちらへと合わさる。


「お兄様…?おはよ〜」


 ふわふわと花が周りに飛んでいるような笑顔にうっかりキスしそうになり、抗う事無く唇を寄せる。
 それでも軽く触れ合うだけに済ませ、アッシュは躰を起こした。


「出る用意をしろ。眼鏡のところに行くぞ」
「へ?ぇ、…あ。あれ?」


 ルークも自分が元に戻っていない事に気付いたらしい。
 起き上がりかけた躰に慌てて毛布を引き寄せ、顔を赤くする。
 先にベッドから降りてさっさと服を着たアッシュは、未だに動こうとしないルークに眉を寄せた。


「おい、どうした?早く用意を」
「腰が重くて、立てない…」
「あー…」


 そりゃ俺のせいだ。
 自覚があったため、罵声は出てこない。


「わかった、ちょっと待ってろ」


 とりあえず女物の服を掻き集め、ベッドに放る。
 下着はどうするかと考えたが、やはりブラジャーはしないと駄目だろうと思い、こちらも女物の方を投げた。

 だが、文句を言いたそうにこちらをじっと見てくる。


「早く着替えろ」
「……やっぱりこっち着なきゃ駄目?」
「当然だ。着るのが恥ずかしいのなら、俺が着せてやろうか?」


 色々とオプション付きでな、と付け加えれば、ルークは顔を真っ赤にしてぶんぶんと首を振った。
 ちっ、つまらん。

 身支度がようやく終わり宿を出れば、空は昨日に引き続き快晴だ。
 平和な青空をしている。


「や、やだお兄様。下ろせって!」
「歩けないと駄々捏ねた奴はどこのどいつだ?昨日も担いだくらいなんだ、今更気にするな」
「ででででも、これは無い!こんなお姫様抱っこ…っ」
「嬉しいだろう?」


 人の腕の中でぎゃあぎゃあと叫ぶルークを気にせず、アッシュはジェイドのいるであろう軍の建物にまで足を運んだ。
 流石に建物の中では下ろしたが、彼女は顔を真っ赤にして睨んでくる。
 そんな顔されても、可愛いだけなのだが。


「おい眼鏡いるか」
「ああ、おはようございますアッシュ。ルークはどうし……」


 デスクに座り書類の整理をしていたジェイドの視線が、扉を開けたアッシュの後ろに行った途端、手の動きが止まった。
 ルークはひょこりと人の影から顔を出し、情けない声を出す。


「ジェイド〜、俺、元に戻らなかったんだけど」
「おや……おかしいですね。一日くらいで効果は切れると思っていたのですが。昨日の夜、何かしましたか?」
「うーんと。セックス?」


 ぶっ、と噴き出したのは、当然ながら己である。


「この屑が、いらん事を言うな!」
「ごごごごめんなさい!」
「ふむ…」


 慌ててルークの口を塞ぐも既に遅く、ジェイドは肩を竦めた。
 ちっと舌打ちし、これからネチネチと言ってくるであろう男を先手必勝とばかりに睨む。
 だがジェイドは、真面目な顔をして立ち上がった。


「ちょっとルーク、廊下で待っていてくれませんか?アッシュは中へ」
「えー…」


 頬を膨らませながらも、ルークはしぶしぶとドアを閉める。
 いきなりの状況に眉を寄せつつ、アッシュは改めてジェイドへと向き直った。
 彼の赤い眼は、酷く静かだ。


「さてと。アッシュ、ルークとセックスしてしまったのは事実ですか?」
「……答える義理は無い」
「別に貴方が今まで憎んでいたはずのルークに手を出したからって、文句を付けるつもりは無いですよ。ただ、確認したいだけですから」
「……ああ、アイツを抱いた」
「そうですか。そうなると、もしかしたらそのまま妊娠してしまったのかもしれませんね」
「にっ、」


 妊娠―――?

 唐突の言葉に一瞬フリーズしかけたアッシュだったが、何とか持ちこたえた。
 避妊道具も付けずに何度も中に出したのだ、元が男だからと言って可能性がゼロというわけではない。
 それに妊娠したから男に戻れないという内容には、納得が行く。

 まさか本当に、アイツと俺の間に子供が出来る……?


「おい眼鏡。この事はルークに言うなよ」
「どうしてですか?」
「昨日まで男だった奴に、子供まで身篭ったなんて言えるか?しかももう、男に戻らないというのに」
「ああ、確かにそうですね。ではまだ黙っておきましょう。男には戻れない、それを伝えるだけでもきっとショックでしょうし。ですが、これでもう貴方がたは、消滅しなくて済むのですよね」
「…どういう、意味だ?」


 ふっと笑みを浮かべたジェイドに、アッシュはいぶかしんだ。
 あの眼鏡が、えらく柔らかい微笑を浮かべているのだ。
 可笑しいと思うのが普通であろう。

 それが伝わったらしく、微笑は苦笑へと変わる。


「何故ルークにあのような薬を飲ませたのか、詳しく話さないといけませんね」


 ルークを交えて紅茶でも飲みましょうか、とにこやかに笑みを浮かべるジェイドに、アッシュはやはり意味を図りかねて、眉間に皺を寄せた。





  ...end.



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お風呂エッチを書いてみたかったんです。

2013.03.13 改定
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