まだ好きとは言えないけれど  
前篇

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 それは僅かながらも世間を賑わしたニュースだった。
 何ヶ月かぶりに、高校生探偵工藤新一が新聞の一面を飾ったのである。

 記事は、その日の彼が解決した事件の内容と、たった十分という速さで解決した素晴らしい手腕への賛辞。
 そして少しだけ、今まで表に出てこなかった理由として、大きな組織に命を狙われていた事が書かれていた。

 新聞を見た者は誰もが、以前はまだ高校生らしくあどけない印象のあった彼に対し、すさまじい成長を遂げたと感じるだろう。
 全てを見透かすような強い眼をした横顔の写真は、精悍で研ぎ澄まされた美しさがあった。




 退廃したビルの屋上。
 夜の静寂を破るようにガチャリと重いドアの開く音がして、キッドは月に宝石を翳していたその手を下ろした。
 また目当ての宝石ではなかったと、哀愁を胸に抱く暇すら今日は無い。

 背中から伝わってくる、気迫。
 ぞくりと駆け抜けていく悪寒は、以前は決して無かったものだ。

 恐怖にも似た感情の沸き上がりを無視し、音をした方へと優雅に振り返る。
 現れた強烈な存在は、唇に弧を描き冷笑を浮かべていた。
 引きずられそうになる意識を自覚しながらも、キッドもまた微笑する。


「……これはこれは、随分と有名な方がいらっしゃったものですね」
「ああ。初めましてだな」


 クツリと喉を鳴らし嘲るのは、この言葉のやりとりが道化であるからか。

 張り詰めた空気が、肌に刺さる。
 今すぐここから飛び立たなければ、命さえも奪われてしまうような錯覚。
 だが飛び立とうとするほんの僅かな隙さえも、工藤新一という人間相手には命取りだ。

 それに、そんな無粋な事をしようとも思わない。

 いつでもトランプ銃を構えられる体勢に入り、彼の出方を窺った。
 彼は相変わらず右手をズボンのポケットに入れたまま、そこに佇んでいるだけ。
 しかし左に付けられている腕時計が麻酔銃であるのは、姿が変わっても同じだろう。

 互いに眼を逸らさぬまま、僅かな時間が経った。
 このまま対峙していても、埒は明かない。

 思考した瞬時に、懐からトランプ銃を出して、撃った。
 二発。
 彼の足下を狙ったトランプは、僅かな動きだけで避けられコンクリートの床に刺さる。
 左腕を構えようとする動きを封じるように、もう一発。

 上体を傾けて避けた、その先にまた撃とうとし、しかし彼が出した右手を視界に捕らえた瞬間、キッドは左へと避けた。

 銃である。
 ただし弾丸が出る音はなく、コンクリートに弾かれたのは小さな針。

 それを目で追った瞬間、首筋にちくりとした痛みが走った。
 撃たれた、と。
 気付いたけれど、眠気は、襲ってこない。

 再び銃を向けると、工藤新一は眼を眇めて笑みを深くした。


「流石だな。それを受けて、平静を保ち立っていられるなんてよ」
「好敵手である貴方を前にして、醜態を晒すわけにはいきませんから」
「だが、躰が震えているぜ」
「……そこは、出来れば見て見ぬ振りを、していただきたいのですが」


 呼吸が荒くなり上手く言葉を紡げなかった事に、思わず苦笑が漏れた。
 全身を熱が駆け巡り、ドクドクと血液が目まぐるしく循環している。
 少し意識が朦朧としているのにも拘らず、下肢は愚かにも、何もしていないのに勃起していた。


「媚薬だなんて、酷い事を、なさるのですね」
「睡眠薬の方が良かったのか?俺には眠っている人間を犯す趣味はねぇけど」


 悠然とした足取りでこちらに歩んでくる姿は、酷く魅惑的だった。
 月光を浴びて怪しく光る双眸が、冷酷でありながら強烈な熱を孕んでいる。

 ぞくりと、また背筋が震え、全身を熱が苛む。
 気付けば意思に逆らい膝が折れ、躰はコンクリートの上へと崩れていた。
 自分の手からトランプ銃が落ちた音は、まるで遠くからのもののようだ。

 腕を掴まれたので頭までコンクリートにぶつける事は無かったが、座り込んでしまった腰に腕が回り、間近から見下ろされる。
 媚薬のせいだけでなく顔が赤くなったのを、自覚する。


「名探偵……」
「息が、荒いな」


 唇に彼の吐息が掛かり、反射的に眼を閉じた。

 触れる、互いの唇。
 柔らかくしっとりしていて、まだ触れているだけだというのに甘い。
 どれだけ彼と相対し戦おうとも、感情が欲しているからだろうか。


「ん……」


 もっと欲しくて素直に口を開いたら、合わせるように舌が咥内に入ってきて、心が歓喜に震えた。
 舌先が触れ合い、それだけで全身に快楽が駆け巡る。

 媚薬で感じすぎて意識が朦朧として、必死に留めようと彼の背に腕を回し縋れば、宥めるように下唇を柔くはまれた。
 頬を撫でられ、頭を撫でられ、優しい愛撫に酔いしれてしまう。


「ん……はふ、ぁ……ん、んむ」
「………ふ…、……ん…」


 舌先を突かれ強く押されて表面が触れ合い、絡むたび、くちゅり、くちゅりと唾液が混ざる。
 歯列をなぞられ、舌裏を辿られていき、艶めかしい感触に全身が戦慄いた。
 優しくも深く、まるで呼吸さえも飲まれているような感覚。
 とても気持ちが良い。


「…うぁん…、ん……は」


 名残惜しむように、舐められながら彼の舌が離れていった。
 咥内に溜まっていた二人分の唾液をゴクリと飲み、けれどうまく飲みきれなかったものが口の端から伝い落ちる。

 ああ……名探偵の唾液だ。
 ずっと欲しかった、貴方の…。


「ん、はぁ……、あ、ふぅ…」
「……キッド」


 荒く呼吸を繰り返しながら、見下ろしてくる男をぼんやりと見返した。
 浮かんでいた涙で視界がぶれて焦点は合わず、意識も朦朧として定まらない。

 ただ、躰はもう我慢出来ないほどに熱かった。


「名探偵……、もっと、欲しいです」


 背中に回していた腕を彼の首裏まで上げていき、顔を引き寄せた。
 しかし、近づけていった唇を指で抑えられてしまう。


「バーロ。ここで、これ以上やれねぇだろ」
「そんな。……いえ、そうですけれど。でも名探偵が、媚薬なんて使うからいけないんですよ…?」
「元々そういう勝負だったんだから、仕方無ぇだろ。オメェだってトランプに同じようなもん塗ってただろうに、よく言うぜ」
「そう、ですけど……」


 それこそ仕方が無いではないか。
 この男が欲しかったのだから。

 彼が薬で小さくなっていた時から相手に欲望を抱き、また相手から同じものを向けられていると気付いていた。
 しかし互いに感情を抑制し、相対しても探偵と怪盗という役割を果たし続けた。
 彼が本来の姿に戻った時には、組み敷いて、暴いて、全てを自分のものにすると誓いながら。

 だというのに、彼に負けてしまってこの有様だ。
 少し……いや、かなり悔しい。

 しかもこの状態で放置だなんて、知ってはいたが名探偵は意地悪である。


「ほら、宝石は返しておいてやるから出せよ」
「……お願いします」


 ポンッと、何枚かの紙吹雪と一緒に、布に包んだ宝石を取り出した。
 掌に乗せたそれを、彼は確認もせずにポケットの中にしまう。
 それだけで、じわりと胸が締め付けられた。

 本人にとっては取るに足らない行動だろうが、そんな些細な事がどれほど嬉しいか。
 怪盗である自分を信頼している探偵に、とてつもない愛しさが募る。


「名探偵、名探偵……」


 内から沸き上がる熱に耐えきれず、彼の手を取り、自分の下肢にすり付けた。
 熱を持ち疼いてどうしようもなくなっている場所は、布越しに彼の掌に触れられただけでもじわりと先走りを零す。
 駆け巡る快楽に、吐息が漏れる。


「もう、こんなになってんのか。すげぇな。ちょっと湿ってる」


 揶揄するように苦笑されたけれど、含まれていた優しさに、むしろ焦燥に駆られた。
 銃を構えていた時はすさまじい欲望を向けてくれていたというのに、今は自分ばかりが求めているようだ。
 熱に浮かされた上に哀しみにまみれ、涙が零れてしまう。


「う…お願いします、名探偵。こんな状態で放置されるのは、つらいです」
「わかってる。俺の部屋で待ってろ。そうしたら、……な?」


 耳元で囁かれた声は官能に塗れていて、期待に熱い吐息が漏れた。















 フラフラになりながらも名探偵の家に辿り着き、窓から侵入して彼のベッドに入ってから、もう一時間が経っていた。
 けれどまだ、彼は帰ってこない。


「は……あぅ、ん」


 月光だけが窓から差し込む薄暗い部屋の中で、彼の匂いがするベッドの上に蹲り、じくじくする熱に耐え続ける。
 初めて好意を抱く相手のベッドの上にいるというのは、本来ならば少し戸惑いながらも嬉しくて、でもほんのりと羞恥を感じる状況なのだろう。
 だが今は、ただひたすら彼からの愛撫が欲しかった。

 靴は流石に脱いでいたが、モノクルもシルクハットも付けたまま、服は一切乱していない。
 下着やズボンは先走りでじわりと湿っており、熱が篭っていて不快だ。

 何度、ベルトを外し、自分で下肢を弄ってしまおうかと誘惑に流されかけたか。
 そのたびに思い止まり、枯渇して乾く喉を潤おそうと、唾液を飲み込んだ。


「んは…ぁ、……あ、う」


 彼とビルの屋上で別れてからもう二時間近く経っているというのに、まだ帰ってこない。
 工藤新一として帰ってきたばかりだから、知り合いの警察に会うたびに時間を取られてしまっているのだろうと推測は出来る。

 でももし、このまま放置され続けたら。
 焦らされて焦らされて、それでも朝方になっても帰ってこなかったら。
 もし、既にこちらに対し興味が失せて、求めているのは自分ばかりだとしたら…?

 そう思ったら悲しくなって、心臓が壊れそうになった。


「うぅ…名探偵……」


 熱を逃がしていないからか、媚薬の効果は全く切れない。
 呼吸は荒くなるばかりで、苦しさが増す。
 触れられたいと全身が訴えて、涙が零れ落ちていく。

 階下から物音が聞こえてきたのは、その時だった。

 ぎしり、ぎしり。
 階段を上がってくる音。
 それは徐々に大きくなり、比例して胸から込み上がってくる激しい期待に、涙が溢れて止まらなかった。
 ドアが開いても、視界がぼやけていてハッキリとした姿が見えない。


「良かった、いたか」
「名、探偵……?」
「悪ぃな、少し一課の方に捕まっていた。ったく、オメェがもう帰っちまっていないんじゃねぇかって、滅茶苦茶焦ってたっての」


 安堵に彩られた彼の声に、涙を流しながらも笑みを浮かべる。
 良かった、帰ってきて下さった。


「名探偵、早く。早く、私に触って下さい」


 懇願し手を伸ばしたら、手袋をしたままの指先をゆるく取られた。
 顔が近づいてきて、濡れた頬にちゅっとキスされる。
 それから唇に。
 柔らかい口付けに、胸が甘く締め付けられる。


「遅くなって悪かった。だから泣くな。悲しんで泣かれるのは、嬉しくねぇ」
「すみません……」


 しぱしぱ瞬きして、眼球を覆っていた雫を落とした。
 そして改めて、名探偵の顔を見つめる。
 艶やかな青の双眸を鮮明に捕らえると、彼は優しく微笑んでくれた。


「キッド」


 ゆっくりベッドに押し倒され、シルクハットがベッドの下に落ちていく。
 クッションに頭を預けると、ギシリと小さく軋むスプリング。
 頭を囲うように肘を置かれ、彼の匂いのするベッドにも包まれ、彼自身に覆われるこの状況に、心臓はドキドキと忙しく高鳴っていくばかりだ。

 見下ろしてくる顔は、月光により青白く彩られていた。
 とても美しく雄々しくて、眼を奪われずにはいられない。


「名探偵。とても、綺麗です」
「オメェも。すげぇ綺麗だ。……すげぇ、そそる」


 見つめてくる眼に魅入られ、誘われるように彼の頬に触れる。
 するとその手を捕まれ、丁寧に手袋を外された。
 もう片方も取られている間に、もう一度、今度は直接触ってみる。

 すべらかな肌だ。
 触れているだけなのに、不思議と喜びが込み上げてくる。

 首筋に顔を埋められ、吸われると、じわりとした微かな痛みが襲ってきた。
 肌を唇で触れられ舐められ、躰にキスマークを付けられていく。


「は、ぁ……」


 キッドもまた彼へ愛撫するように頬を撫で、首筋までゆっくりと辿っていった。
 そうしてトクトクと伝わってくる脈に、ふと疑問が浮かぶ。
 自分の手が熱く震えていて判断しにくいが、どうしてか彼の鼓動も早いような……。


「もしかして、名探偵も、緊張なさっているのでしょうか」


 既にネクタイを取られ、ジャケットやシャツの前も肌蹴られており、仕込んであるマジック用品はベッドの上に乱雑に散らばっている。
 ここまではとても慣れた手つきだ。
 しかし名探偵は顔を上げると、小さく苦笑した。


「そりゃあな。ずっと欲しくて、でも小さな手では掴む事が出来なかったお前を、ようやく自分の元に落とせたんだ。ここまで漕ぎ着けるのに苦労したぶん、緊張も強くなっちまって当然だろ?」


 そっと、掌が心臓の上に置かれる。
 そのまま胸から下腹部へと撫でられていき、ベルトに手を掛けられ、すぐに外されてしまった。
 先程緊張していると言っていたばかりなのに、やけに楽しげな表情で見つめられる。

 ズボンや下着を脱がされ、勃起してトロトロと蜜を零しているペニスが露になると、羞恥など滅多に感じない自分でも流石に顔が熱くなった。
 月明かりのせいで妖しく光っているのが、余計に居た堪れなくさせる。


「へぇ。いやらしいな」
「そんな。……あ、あの、出来れば、そんな熱心に見ないで下さい…」


 間近で自分のペニスを見られるだなんて、あまりにも恥ずかしい。
 けれど気付けば足の裏をベッドに付けて腰を浮かし、彼を誘うようにゆるゆると揺らしていた。
 眩しげに眼を細められ、優しい手つきでペニス全体を包まれる。


「ふあっ……あ、ん」


 ぶわりと全身に熱が駆け巡り、それだけで射精しそうになった。
 緩く揉まれ、くちくちと音が鳴る。

 凄い、名探偵が自分のペニスを触っているのだ。


「め、名探偵……あ、う…気持ち悪く、ないですか…?」
「あ?オメェのもんなのに気持ち悪ぃわけないだろ。すげぇ可愛いぜ」
「そっ…、そう、ですか」


 あまり嬉しくない言葉だが、もし自分が名探偵の立場であったならば、やはり彼の痴態は艶めかしくも可愛らしく見えるだろうから、否定はしなかった。
 ただ、かなり恥ずかしい。

 何度か全体を擦られてから、先端の穴を指の腹で抉じ開けられるように弄られる。
 媚薬で犯されていた躰は、少しの愛撫すら強烈な快楽へと変換していた。
 触れられている場所から全身へと広がっていき、ガクガクと震えが止まらない。

 気持ち良い、とても気持ち良くて。


「あ、も…イきたい、です……ぁ、あう」


 近くにあった毛布を引き寄せ顔を押し付けたり、掌で口元を覆ったり、緩く首を振ったり。
 込み上がってくる熱を逃そうと動いていたが、躰中を駆け巡る快楽は、あっという間に許容量を超えていく。


「や、…出る、出ちゃいます…、あ、ぁ、ふぁあ……っ!」


 ぶわっと、強烈な熱さに見舞われた。
 全身がビクビクと痙攣し、快楽が足先から脳天まで否応無しに駆け抜けていく。
 上り詰め、溜まっていた熱が勢い良くほとばしる。


「あぁ、あ、…は……う」


 キッドはベッドに沈んだまま、荒い呼吸を繰り返した。
 名探偵がベッドヘッドにあったティッシュに手を伸ばし、精液で汚れた掌を拭くのを、ぼんやりと見つめる。

 気持ち良くて、いつの間にかまた涙が浮かんでいた。
 しかしまだ媚薬の効果が抜けていないのか、すぐにまたペニスが勃起してしまう。

 欲しい。
 もっと、もっと。

 貴方が欲しい。

 そんな想いに答えるかのように、ペニスの先端に軽くキスをされる。
 ふわんと心があったかくなり、か細い吐息が漏れた。


「名探偵……」
「少しは楽になったか?」
「…はい」


 頷いたら、名探偵は優しく笑ってくれた。
 心臓が甘く締め付けられる。

 ああ、今日だけでどれほど彼を愛しいと感じ、彼からの好意を受け止めただろう。
 想いは溢れるように募っていくばかりだ。
 際限なんて無いほどに。


「キッド、うつ伏せになれよ」
「は………あ、え…うつ伏せ、ですか」


 頷きかけたが、その意味を把握して、冷静に言葉を返したつもりでも顔は酷く熱くなった。
 うつ伏せになるとは、つまりそういう事だ。


「キッド」
「…………はい…」


 とてつもなく恥ずかしいけれども、しかし勝負に負けたのは自分だ。
 逆らえない。

 おずおずと、言われた通りに躰を反転させて、クッションに顔を押し付けた。
 そこから名探偵の匂いがして、とにかく少しでも落ち着こうと呼吸を繰り返す。

 しかしやはり、羞恥は拭えるものではない。
 腰を引き上げられて四つん這いにされて、マントをどかされるともう駄目だった。

 本来ならば排泄にしか使わない穴を、しかも物心付いた頃から誰にも見られていない場所を見られているのだ。
 月明かりしか無いとわかっていても、恥ずかしすぎて、可能ならば今すぐどこかに逃げたかった。


「凄いな。物欲しそうにヒクついていて、俺を誘ってきている」


 尻を揉むように撫でられ、躰が小さく震える。
 指の腹で穴を覆うように触れられると、とたんに未知の領域を意識してしまい、怖くなった。


「名探偵、ちょっと待って下さ、……や、ふぁっ!?」


 ぬめった感触が尻の間を這っていき、ぎくりと腰が跳ねた。
 まさかと思い、恐る恐る後ろを振り向く。
 すると本気で名探偵の顔が臀部にとてつもなく近くて、あまりにも衝撃な光景に、ぶわっと涙が溢れた。


「そんなっ……ぁ、やあ…!」


 舌が、閉じている後孔を覆うように這っていた。
 窄まっているヒダに唾液を擦り込まれていき、中心を開けるように優しく突かれ、舐められる。
 広がっていく快楽に、腰が甘く蕩けていく。

 熱くて、名探偵に触れられると何処もかしこもとても気持ち良くて。
 それでもやはり彼に排泄する場所を舐められている事実を享受しきれなくて、ボロボロ涙が零れた。


「ひっう……汚い、汚いですからぁ…ふぅう」


 シーツを引っ掻き、モノクルが落ちるのも構わずいやいやと首を振り、何度も逃げようとした。
 しかし太股に腕を回されていて思うように動けず、舐められるばかり。

 嫌なのに、同時にもっとしてほしいとも思ってしまい、相反した感情に混乱してくる。
 どれだけIQが高かろうが、次から次へと涌き出てくる感情の制御など、簡単に出来るはずが無い。
 訳がわからなくなって、泣きたくないのに涙が止まらなくて。

 でも、気持ち良い。


「や、です…名探偵、こんなの、嫌……」


 情けないと思いながらも、とうとう弱音を吐いてしまった。
 混乱して頭が痛くなってくるし、胸も苦しい。

 ぐずぐず泣いていたら、舌が離れていき、掌でやんわりと尻を撫でられた。


「キッド。大丈夫だから、んな嫌がんな」
「で、ですが…」
「感じるままに腰を振ってろ。その方が俺は嬉しい」
「名探偵。……わかり、ました」


 優しい声に頷いて、どうにか強張っていた躰から力を抜いた。
 素直に身を任せると、ちゅっとヒクつく秘部にキスされる。
 よく出来ましたと褒められているみたいで、なぜか嬉しくなった。

 ああ、そうか。
 自分はただ、こんな醜態を晒して、彼に卑下されるのが嫌だったのだ。
 自尊心を粉々にされたくなかった。

 だが情けない姿であっても、貴方が慈しんでくれるのならば。
 愛おしんでいただけるのであれば、いくらでも受け入れられる。





  to be continued...



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2013.03.13
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