proof 4
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ああ、泣かしちまったなぁ。
と、タイルに座り込んでしまった森田を見ながら、銀二は首裏を掻いた。
まさか嫌がられるとは思っていなかったので、いきなりの状況にどう対応すべきか判断しきれない。
まぁ…出て行けと言われて、はいそうですかと言える状況でないのだけは、確かだ。
出ていったら確実に、今後数週間は息の詰まる空気になる。
一緒に暮らしているだけでなく、仕事仲間でもあるのだ。
たとえ息詰まっても、無闇に外に出れない。
逃げ場が無いのは森田にとって苦痛なはずだし、自分もこんな事で仕事にまで支障をきたすのは避けたかった。
しかしじゃあどう慰めるかと考えても、残念ながら生っちょろい言葉なんざ一つも浮かびやしない。
つうか……嫌だったのか、そうか…。
そんなふうに少しばかりの落ち込みを自覚し、銀二は小さく溜め息をついた。
それは森田に聞こえたようで、俯いたまま大きく肩を揺らす。
おいおい、と内心呆れた瞬間である。
出ていけなんて言ったくせに、こちらの動向に過剰に反応しすぎだ。
出ていってほしくないなら、初めからそんな言葉を口にすべきではない。
常に冷静でなければギャンブルの世界では生きていけないというのに、こんな事で冷静さを失い一時の感情に流されるとは。
そしてこんな状況下でもとりあえず冷静である銀二は、考えても答えの出にくい相手の感情を把握するよりも先に、自分の欲望に忠実に従い、この場の空気を打破する事を選んだ。
「なぁ森田よ。とりあえず俺に抱かれるか、それともここで一人ベソ掻いているかを選べ」
「……、………ぇ?」
数秒の後、のろのろと顔を上げた森田だったが、意味がわからないのか間抜けにもポカンと口を開けている。
泣き腫らしている双眸を見下ろし、銀二はもう一度淡々と声を発した。
「わからなかったか?俺に抱かれたいか、抱かれたくないか。ほら、どっちが良いんだ?早く選べ」
「ぇ、え?えっ、…だ、抱かれたいで、す?」
「そうか。ならもう躰冷やすのは終わりにして、出るぞ」
唖然としている彼の腕を引っつかむと、強引に風呂場から出させた。
すぐに脱衣所の引き出しにあるタオルを森田の頭に放れば、放心はしていても機械的に躰を動かせるらしく、髪を拭き始める。
…器用なんだか、不器用なんだか。
銀二もさっさと躰を拭くと、眼に付いたチューブを持って、まだモダモダと躰を拭いている森田の腕を再び掴んだ。
そしてそのまま脱衣所を出る。
「わわ、ちょ、待って下さい銀さん!俺、服着てない…っ」
「俺も着てないから安心しな」
「そんなの見ればわかります!…じゃなくて!」
「あー、うるせぇな。一度決めたんなら、文句言わずに黙って付いてこい」
「決めるって何を!?」
パニクっているのか素っ裸で家の中を歩くのが恥ずかしいのか、森田は顔を真っ赤にして必死に手を解こうとしていた。
が、歩きながら簡単に解かれるようなほどこちらとて弱くはない。
結局自室に着いた時には森田はゼーゼー言って疲れを滲ませ、そんな奴をベッドに放るのはとても簡単だった。
「うわ!?」
どさっと仰向けに倒れた躰が起きあがれないように素早くその上に覆い被さり、ついで洗面所から持ってきた軟膏の蓋を歯で開け、チューブを押し潰して出した中身を人差し指と親指で掬う。
ほとんど中身の無くなった残骸はさっさと床に投げ……当然、指は森田のケツ行きである。
「ひっい…」
窄まりを撫でた途端、予測通り人の下で暴れ出すが、動かないように思いっきり体重を掛けているので逃げだせなどしないだろう。
皺に馴染ませるように軟膏を塗っていくと、森田はビクビクしながら、縋るようにこちらを見てきた。
「嫌、なにっ。なに、なんでっ」
どうやら、現状を理解する事を脳が拒否しているらしい。
夢か?とでも思ってんなら、それはそれで可愛いもんだが。
銀二は質の悪い笑みをニィと浮かべると、指をさっさと奥まで突っ込んだ。
「ひあっ…!?」
「痛くはねぇだろ?これだけ軟膏使って滑りを良くしてんだから」
中は常温よりも少し高めだろうか。
まだあまり濡れてはいないが、媚肉は指をひくひくと柔く締め付けてくる。
眉を寄せて涙を溜めてはいるものの、気持ち良さそうに眼を細め、口は開きっぱなしだ。
「う、あ、ぁ……なんで、銀さ」
「初めて…にしちゃ、えらく馴染むのが早ぇが。でもまぁこんなもんか?」
慣れているようには感じない、ぎこちない締め付け。
前立腺のしこりをさすっても、まだ小さく腰が跳ねる程度。
弄られ慣れたアナルは、前立腺を撫でりゃ一発でとろけて受け入れ万端になるもんなので、やはり初めてなのだろう。
まだ自分が二十代、三十代の頃、金で一晩買った女の十回に一回の割合で、外見はお姉さんでも躰にペニスが付いている相手だった事を思い出す。
あの頃は自分も相当に若かった。
「あ、……なん、なんで、銀さっ…ぁ、あ」
びくびくと震え、まだ湿っている長い黒髪をぱさぱさとシーツに当てている森田は、先ほどからなんで、なんでと繰り返している。
しかし銀二は答えなかった。
答えなんて、自分で考えろってなもんである。
そもそも自分を含め、世の男がセックスする理由なんざ一つしかねぇ。
やりたいから、やる。
やりたくなきゃそもそもペニスは起たない。
単純明快ではないか。
なんで、こんな事をするのか?
―――抱きたくなったからに決まっているだろう。
では森田の意思はどうなるのか、についてであるが、相手が男なのでわかりやすい。
気分が盛り上がったり気持ち良いと、すぐに勃起するからだ。
後ろを弄られても嫌悪が勝れば簡単には起たないが、今の森田は先ほど風呂場で射精したばかりだというのに、再びペニスを勃起させてトロトロと先走りを零している。
もう体重を掛けて躰を押さえなくても、逃げようとすらしない。
ただ震えて、涙を堪えているだけだ。
何度も何度も中を広げながら前立腺を撫でていると、次第にか細い悲鳴が上がってきた。
「ひっ…い?…ひっ、は、…あっ!?」
「ようやく感じてきたか。中も、かなり良い具合だな」
分泌された腸液によって中から濡れてトロトロになり、指二本で掻き回しても入り口や中がひきつる様子は無い。
気持ち良さそうに蠢いている。
これなら大丈夫だろう。
銀二は森田の片足を肩に担ぎ、股を広げさせると、指を引き抜いてすぐに自分のペニスを埋め込んでいった。
「や、やぁ!?う、ひっ、あーっ!」
入り口をいっぱいに広げ皺が伸びきっても、森田の後ろはずぶずぶとペニスを飲み込んでいった。
しかし全部を埋め込み軽く揺すった途端、強烈な締め付けが襲ってきて、銀二は思わず息を詰めた。
「うあー!!あ、ぁ、…あううぅ―――!!」
森田はガクガクと大きく躰を痙攣させて、悲鳴を上げた。
それが一分程度も続き、その間胎内も何度も断絶的に強く締め付けてくる為、持っていかれないように耐えるのに必死だ。
「あう、あう!うううー!」
「ぐっ…、っ、う」
「あ、う、あう、あ、あ」
しばらくして、強い締め付けは収まった。
だが緩い蠢きも痙攣も続いていて、しかも森田のペニスは勃起したまま、射精した形跡がない。
「ぁ…あ、………あ」
「まさか初っぱなから女のようにイってくれるとはな。全く、男冥利に尽きるじゃねぇか」
突っ込んだだけでいきなり射精を伴わないドライオーガスムでイくとなると、相当に自分に抱かれたかったという事になる。
精神的に強く求めていた結果だ。
こりゃ相当に好かれてるんだな、と思ったが、悪い気もしない。
ようやく抽出を始めると、森田は感じすぎるのか涙をぼろぼろに零した。
「いやぁ!銀さ、も…やあ!」
「嫌じゃねぇだろ。まだここ、出してねぇんだから行けるだろ?」
「ひっ…や、出した、出したひっ…」
「俺が出したらこっちも弄ってやるよ。じゃなきゃ、自分でやれ」
勃起しているペニスを軽く撫でれば、それだけでぶるっと腰を揺らすもんだから、つい喉を鳴らして笑ってしまった。
ペニスに絡みつく腸壁は、引き抜こうとすればズルズルと中の媚肉が見えるくらいに捲れあがり、押し込めば一気に飲み込んで、美味そうに味わっていく。
何度か抽出するだけでイきそうなくらいに森田の躰は気持ち良く、理性なんてもんはさっさと捨てて赴くままにぐちゃぐちゃに突っ込んで掻き回した。
「あぁ、ひ、あ、う、んんっ」
がむしゃらになって突き上げて。
気持ち良さそうに喘ぐ声が、随分近くから聞こえるという事に気付いたのは、唇を重ねた時だ。
いつの間にか森田の腕は自分の首に回っていて、しがみつかれていた。
当たり前のように彼の舌を捕らえ舐めていたが、次第に森田も拙い舌使いで舐め返してくる。
「ふう、ん…、んむ、…ん、んう!」
間近で見る顔は、かなりクルものがあった。
汗と涙と鼻水と涎でぐしゃぐしゃで、まるでガキみたいで、そのくせ腰をくねらして喘ぐ声はひどく艶めかしく。
普段必死になって自分に追いつこうとして毅然な態度をしている男がこんな姿を晒していると、むしろ征服欲が沸くのは、己の気質なのだろうか。
「ぁ、あっ、や、またイく、イク、イクッ」
「っ…は、っ。良いぜ、…イケよ」
「やぁ!銀さ、触って、前、あぁ、触って下さ」
「…一緒に、てか?ホント、可愛い事言ってくれるじゃねぇか」
クックッと笑えば、それだけの振動でもつらいのか、痛いくらいにしがみつかれた。
銀二は望むままに森田のペニスに手を掛け、ぐりぐりと先端を抉る。
そして再び奥を突いた時。
「イッあああっああ!!」
「っ―――」
弄っていた森田のペニスから、精液が飛び散った。
銀二もまた、強烈な締め付けに今度は抗わず、森田の胎内へと精液をぶちまける。
「あ、あう、熱いっ、銀さ…」
「……、は…」
「ぇ!?まっ…やっやだ、もう中、いっぱいっ、ひ、抜いて、やだ、やだ」
溜まっていたもんを全部出そうと揺すっていただけだったのだが、まだヤられると勘違いしたのか、ぼろぼろに泣いてしゃくりあげて、もうイヤだと繰り返す。
……が、泣かれるとむしろムラムラしてしまい、また勃起してしまった。
まだまだ枯れる年齢ではないらしい。
「すまん森田、もう一回だけ付き合え」
「ひいっ」
聞こえてきたのは悲鳴だったが、キスして揺さぶれば、すぐにまた色っぽい鳴き声に変わった。
「……銀さん」
「んー?」
「………なんで、こんな…事」
セックスして満足して、煙草を吸っていると、横腹辺りに顔を埋めている森田がぐずっと鼻を鳴らした。
瞼を腫らして、これ以上泣いたら明日の仕事に差し障るのではないかと思うのに、先ほどからずっとこれだ。
大体、まだわかっていないのか。
「お前、俺がどうでも良い男を抱くような奴に見えるのか?美人な女相手とは違ぇんだぞ」
「だっ……て!まさかよもや銀さんが俺を…?なんて思って、違ったら滅茶苦茶ショックじゃないですか!」
「そうだなぁ、そうだったらショックだろうなぁ」
「…………」
からかうように言ったら落ち込んでしまったようで、ぐずぐずと人の腕の中に頭を押し付けてきた。
凹みすぎである。
あまりの反応に、ついつい笑ってしまう程だ。
「くくくっ。ったく、お前は本当に可愛いなぁ。俺に抱かれる夢を見るくらいだもんなぁ?」
「へっ!?…な、なんで、それを」
「今朝、寝言で喘いで俺の名前呼んでたぜ」
「なっ、え、えぇ…っ?」
引っ付いて離れないと思っていたら、今度は見る見るうちに耳まで真っ赤になって、ベッドからはい出ようとする。
しかし腰を引き寄せれば、手も足もベッドを無闇に掻くだけ。
「凹むなら俺の腕の中にしておけ。慰めてやるから」
「う…ぅ、」
「なぁ森田。―――愛している」
「っ!」
「って、俺に言って欲しかったんじゃねぇのか?安心しろ、バックバージン貰った責任はしっかり取ってやるからよ」
「……うう〜!」
意図して耳元で囁いてやれば、唸りながらも再び腕の中に戻ってきた森田に、今度は声を上げて笑った。
...end.
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がっつく銀さんを書きたかったんですが、それ以上にずるい大人になってしまった気が。
銀さんの下に来たばかりの森田は可愛いなぁと思う。
2010.07.19
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