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今宵また、美しい歌が、いずこからか聞こえる。
歌声
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真っ赤な絨毯が真直ぐと伸びている廊下を、一人の男が歩いていた。
窓からは月が覗き、月光に照らされその姿の輪郭が浮かび上がる。
金の髪に、青い眼。
長身のスラリとした体躯に、黒い軍服を身に纏い、ゆっくりとした足取りで歩いていく。
辺りは静かだった。
だが、ふと遠くの方から空気が振るえ、人の気配が感じられる。
彼は窓から月をちらりと見て、その口元に笑みを浮べると、足取りを止めた。
耳を澄まし、近づいてくる足音を聞く。
絨毯に吸い込まれる音は、けれどだんだんはっきりと耳に伝わり、気配はすぐそこまで来ていた。
そして歌うような声が聞こえる。
「…………お帰り、りん……」
暗闇の中、白い体躯を浮かび上がらせ、現われたのは、美しく漆黒の髪をした青年だった。
ガラス細工のように透き通った肌をしていて、躰は折れそうなほどに細い。
赤い眼を細めにっこりと笑い、あどけない表情を晒すも、白いシャツ一枚を羽織っているだけの姿は、妖しい雰囲気を醸し出し、淫らだった。
リンは笑みを浮べ、折れそうな躰をゆっくりと抱きしめた。
「ただいま、シキ」
自分よりもほんの少しだけ低い位置にある耳元に囁くと、シキの躰がふるりと震える。
少し躰を放し、赤い双眸を覗くと、リンはさらりとした頬を撫でた。
「今日も大人しくしてた?」
「うん……待ってた。りんの事……ずっと、ずっと……」
「そう、偉いね」
リンがにこりと笑うと、シキは嬉しそうにリンの首に腕を回してきた。
ちゅ、とリンの唇にキスをし、くすくすと笑う。
「ねぇ……ごほうび、くれる……?」
「そうだね。どうしようか?兄貴」
そう呼ぶと、シキは唇をむっと尖らし、恨めがましくリンを見返した。
「その呼び方、いやだって何度も言った……」
「ごめんごめん、シキ。ご褒美あげるから」
「ほんとう?」
ぱっと表情を輝かせ、シキはころころと笑った。
リンも、普段の威厳のある表情ではない、優しい笑みを浮べた。
「何が良い?」
「ふふ……ええと、ね……」
そして、暗闇の中に鮮やかな音色が響き渡る。
その歌声は……―――。
...end.
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色々と設定はあるのですが…こうなってしまった過程とか。
とりあえずは雰囲気を楽しんでやって下さい。
2005.12.03
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