この陽だまりの中で 笑い合おうか。
一人分の光
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カーテンの閉まっていない窓からは、はっきりとした満月が浮かんでいる。
静かな夜とは打って変わり、ファブレ公爵家の屋敷、その主と奥方の部屋では明るい笑い声が広がっていた。
「でさ、いきなり女の子から触られたガイが叫んじゃって、その子物凄くびっくりして泣いちゃったんだ」
「あいつは子供でも駄目らしいな…つくづく情けない奴だ」
「ははっ」
「まぁまぁアッシュ、そんな事を言ってはいけませんよ。ガイにも色々とあったのですから。ルークも、笑ってはいけませんよ?」
そう我が子等を注意するも、シュザンヌの口調は柔らかく、その表情はとても嬉しそうだ。
ごめんなさいと、用事で今日は帰ってこない父親ファブレ公爵のベッドに腰掛けていたルークが頭を下げ、近くにあった椅子に座っていたアッシュも母親の言葉に、同じように謝罪を口にする。
ルークに向かい合うように自分のベッドに腰掛けていたシュザンヌは、二人を見て笑みを深くした。
「でも、慌てて俺とジェイドで宥めようとしても、男ばっかりだったから…アッシュは何もしないし。結局ティア達が戻ってくるまでわんわん泣かれて、凄く困ったな…あ、その後は皆で食事しに行ったんだ。前に旅してた頃を思い出したよ。しかもアッシュも一緒だしさ。俺、すげぇ嬉しかった」
な、アッシュ!と笑顔でアッシュへと振り向いたルークを見て、アッシュは顔を赤くした。
「な、ば、馬鹿野郎!そんな事まで言うなっ」
「ふふ、二人が楽しんできたようで、私もとても嬉しいわ。折角のご友人ですもの、大切にしないとね」
にっこりとシュザンヌが笑うと、つられたようにルークもへへ、と笑顔を浮かべた。
それを見たアッシュも、先程の取り乱しはどこへやら一瞬にして平静に戻り、そして親しい者にしか見せない微笑をする。
シュザンヌは、ルークやアッシュがこの家に戻ってからというものの、昔よりもはるかに元気になっていた。
それはアッシュとルーク、二人の行動のせいでもあるだろう。
二人は時々こうして、夜寝る前に両親の部屋を訪れ、他愛も無い話をするのだ。
それぞれの理由から長い間離れていた心の距離を埋めるように、そしてずっと反抗的だった態度を改め、大切な両親を労わろうとする大人になった子供達からの、ささやかな親孝行だった。
けれどその行為は、ファブレ公爵やシュザンヌからすれば、とても嬉しいもので。
我が子達が心配をかけないようにと、そして寂しがらないようにと接してくれるその優しさに、喜ばずにはいられない。
シュザンヌはゆっくりと立ち上がり、近くのルークの頭を優しく撫でた。
「さぁ、二人とも。もう夜も遅いわ。部屋に戻ってお眠りなさい。明日はまた仕事ですからね」
「あ、はい。母上」
「わかりました。母上もゆっくり休んで下さい」
「ええ、お休みなさい。アッシュ、ルーク」
「お休みなさい」
「お休みなさい、母上」
二人それぞれに立ち上がりシュザンヌに頭を下げ、部屋を出て行く。
その扉が閉まり姿が見えなくなるまで、シュザンヌは笑顔で二人を見送った。
二人は自分達の部屋へと戻ると、メイド達が用意してそれぞれのベッドに置いてくれていたパジャマに着替え始めた。
ルークは一気にパンツ姿になると、黒のゆったりとしたパジャマズボンに履き替え、ついで白の上着のボタンも全て留める。
アッシュを見ると、今日メイド達が用意したのは同じパジャマらしく、アッシュも黒のズボンを履いていた。
だが途中で脱いだ服を畳んでいる為かまだ上着を着ていなく、上半身は裸のままだ。
ルークはアッシュの長い髪と、それに遮られてあまり見えはしないが自分と同じはずの背中をじっと見つめた。
とても…綺麗だな。
そんな感想が浮かんだ。
血色の良い、けれど日焼けを全くしていない白い肌には、いくつもの傷が付いている。
背中だけではない、あの時の…一度死んだ時に刺さったいくつも剣の傷さえも、胸や腹に全て残っていた。
二人で消えて、そして二年の歳月を経て、ローレライによってまたその存在が構築された時に、なぜそんな痛々しいものが消されなかったのだろうと疑問にも思った。
アッシュが望んだのだ、と、アッシュ本人から聞いたのだけれど、その理由はやっぱり教えてくれなかった。
傷ついた躰は、あの時の残酷な光景を思い出さずにはいられない。
躰中に付いている古い小さな傷も、以前自分がのうのうとこの屋敷にいた頃にアッシュはどれだけ苦労したか、どれだけレプリカであるルークを憎んでいたか…それが伝わってきて、少しだけ哀しくなる。
けれど、それでもやっぱり、とても綺麗な背中だった。
アッシュの性格を表すかのように、ぴんと背筋が伸ばされ、とても大きな存在に見える。
ルークはそっとその背中に手を伸ばした。
触れると、パジャマの上着を着ようとしていた手が止まり、一瞬だけアッシュの躰がびくりと跳ね上がる。
「…どうした」
抑揚の無い声で言葉を投げかけられたが、ルークは答えなかった。
代わりにアッシュの長い髪をそっと掻き分け、露わになった背中に両手を添える。
そしていくつも浮かぶ傷の一つに、唇を落とした。
暖かな体温が伝わってくる。
血の通う、脈動も。
ローレライの下へと落ちる時に受け止めた躰とは違う、生きた躰。
その存在を確かめるだけの、ただただ、静かなキスをする。
「アッシュ」
唇を付けたまま、笑みを浮かべながらその名を呼んだ。
存在を確かめる以外に、何か他意があってこんな行動をしたわけではない。
だがゆっくりと顔を上げ、離れようとすると、いきなり振り向いたアッシュから、すぐ傍にあるベッドへと突き飛ばされた。
「っ…てっ」
ボスンと、柔らかなベッドがルークの背中を受け止めてくれたので痛くは無かったのだが、それでも突き飛ばされるという衝撃に声が出た。
足の脹脛辺りから下はベッドに乗らず宙に浮いたまま。
しかしアッシュに上から乗られ、肩を押さえつけられて起き上がる事が出来無い。
「な、なんだよ…」
「それはこっちの台詞だ。何しやがるんだ全く」
すぐ近くにあるアッシュの顔に思わず頬を赤らめてしまい、それを振り払うようにぶっきらぼうに言い放つが、アッシュもまた眉毛を吊り上げて吐き捨てるように言った。
顔を真上から覗かれ、アッシュの深紅の長い髪が自分の方へと垂れ下がっている。
まるで、小さな世界に閉じ込められたような錯覚に陥ってしまいそうだった。
同じ顔で、けれど全然違う顔が、ゆっくりと近づいてくる。
アッシュの方が格好良くて、アッシュの方が凛々しくて、アッシュの方がきっと綺麗で美人だ。
「……ぁ」
長い睫に縁取られた翡翠の双眸の中に、自分がいる。
それが確認出来た時、自分の唇にはアッシュの唇が重なっていた。
月光が静かに部屋の中に入り、視界にはその青白い光を浴びて、一層白くなった肌が現れる。
まっさらで綺麗な背中は傷一つ無く、彼がどれだけ恵まれた場所にいたかを示していた。
…それに対し、憎いと思う過去があった。
全てを奪われたと、そう思っていたから。
けれど、何も知らない愚かであった彼を蔑み、優越感に浸る事しか出来なかった己は、彼以上に醜かったのかもしれない。
変わっていく彼を見て、それでも憎むしか出来なかった己は、彼よりも精神的に劣る部分があっただろう。
そんな自分を認識し、そしてこのレプリカである存在を個として認めたその瞬間に、死んだはずだった。
痛みに抱かれ、なのに心は晴れやかになって。
愛しい、と…そう思った。
だからこそ、死んだはずの己に暖かなものに包まれているような感覚がし、そしてローレライの声を聞いたあの時、願った。
消えるだろうレプリカを、消すなと。
そして彼がいない世界に、己が今一度存在する意味など無いと。
共に消えるか、共に生きるか。
どちらでも良かったのだが、ローレライは両方ともまた存在させる事を選んだらしい。
「ルーク」
「…ぁ、んっ」
綺麗な背中に鬱血が残る程に吸い付くと、ひくりとルークが躰を揺らした。
白い背中に散らばる長い髪は、焔のように燃え、己の心を滾らせてくれる。
―――あの時、レプリカより先に眼を覚ました己は、彼を起す事無くそこから立ち去った。
まだ、弱い自分には彼の隣に立つ資格が無かったのだ。
アッシュという名の一人の人間として、彼と同等の精神を持ちたいと願い、そしてより強くなる為に旅をした。
躰中の傷を残しておいてくれと、存在が再び構築される時にローレライに頼んだのも、愚かな過去を忘れず、より強くなりたかったからだった。
そして、この傷を見ても彼の元へと行こうと思えたその時、己はこの屋敷に戻ってきた。
「あ…アッシュッ、っん…」
今は、この傷ひとつ無い背中が、こんなにも愛しいと感じる。
この背中に彼なりの苦悩や哀しみや、それを引き起こす多くの無くなった命が圧し掛かっている事を知っている。
そんな彼が、どれだけ仲間達から認められ、愛されていたかを知っている。
白い背中に赤い印を付け、その上から舐めると、気持ちが良いのかルークの押し殺した声が漏れる。
いくつもキスマークを付けながら徐々に下へと降りていき、それと同時に乳首を弄っていた手もまた下へと移動させていく。
ひくり、ひくりと、微かに揺れていた背中は、ズボン越しにペニスを撫でると、一際大きく揺れた。
「なんだ、もう勃ってるじゃねぇか」
「う、うるせぇ!そういうお前こそどうなん、っ、ぅあ!」
悪態をつくルークのペニスをぎゅっと掴むと、ルークは躰を撓らせた後、すぐにクッションへと顔を埋めてしまった。
ううう、と悔しそうに唸る声が聞こえる。
アッシュはそんなルークにふ…と笑みを浮かべると、そのまま行為を続行させるべくルークの腰に腕を回し持ち上げ、空いている手でパジャマとパンツを同時にずり落とした。
ルークはクッションをぎゅと掴み、アッシュのなすがままになっている。
一糸纏わぬ姿となり、腰を上げ尻をアッシュの方へと向けたままでも、やはりクッションに顔を埋めていた。
けれど窓から差し込む月光を頼りに見てみると、肩やら腰やらが小刻みに震えている。
ともすれば淫らなその姿であるが、月光を浴びて青白く浮かび上がるそのしなやかな体躯は、とても美しかった。
とても綺麗で、そしてその姿を見ると心満たされるものがある。
胸の奥に、暖かなものが広がっていく。
太腿の間から手を伸ばし立ち上がっているペニスに触れ、もう片方の手でさらしと吸い付くような肌をした尻の肉を掴み、横へと割り広げた。
暗闇でよく見えないのが残念だと思いつつも、アッシュは現れたアナルに舌を這わした。
「っ!?ぁ…あ…んんぅ!あ、アッシュ、それ汚い!…だ、やだっ、っあ」
びくりと躰を大きく揺らし、ルークが振り返ったのが気配で伝わってきた。
どうやら舐められるとは思っていなかったのか、思っていてもいざやられると羞恥が湧き上がるのか。
抵抗しようと、曲げていた膝をより曲げてアッシュを蹴飛ばそうとするも、ペニスの先端をきゅっと摘むとルークは背を仰け反らせて嬌声を上げた。
焔の髪が闇夜の薄暗い蒼に彩られ、乱れ舞う。
「アッシュ、やめ…て、くれっ、ぁんっ、ん!」
「濡らさないと、いきなり突っ込んだら傷つくだろうが」
「だ、だから…って!…ぅ…あっ、あ」
ひくひくと蠢き始めた入り口を、わざと舐める音が聞こえるように、唾液を擦り付けていく。
勃起しているペニスは精液が漏れ出して、アッシュの手を濡らしていた。
全体を指で擦り、時折尿道の入り口を抉るように押すと、また先走りがとろとろと出てくる。
「ふぁ…ああ、ぁ…ん…」
快楽に酔いしれたように喘ぎ始めたルークに、そろそろかとアナルから顔を上げ、そのまま躰をルークの躰に覆い被さるように移動させた。
ルークの汗ばんだ背中に、アッシュの胸が触れる。
片腕をルークの腰に巻きつけ、もう片方の、精液で濡れた手で先程まで舐め解していた場所を弄り、力を入れる。
指は微かな抵抗を受けながらも、ぬるりと中へ入っていった。
もう幾度と入れている場所なので、もう一本入れてもすんなりと通る。
蠢くルークの胎内は、とても柔らかく、そして暖かかった。
ぐちゅぐちゅと中を掻き混ぜながら、前立腺を執拗に嬲る。
「締め付けてくるな…」
「う、うるさ…っは…ぁ、アッシュ、あ…そこ…だめ、だ……ぁ、」
「気持ち良いか?ルーク。腰が揺れてるぞ」
「っ…う…ぅん、…気持ち、いい…あっ、あ…」
ルークが素直に頷くも、アッシュからは上下に動く後頭部しか見えなかった。
少しだけそれが残念だ、と思った時、ルークがアッシュの方へと少しだけ振り向いた…が、横顔は長い髪によってやはり見えなかった。
「あ、アッシュ…その…っぁ」
「…なんだ?」
「…だ、抱きしめてぇん、だけど……あと、顔…見たい……んぅ」
一瞬、アッシュは内心で驚き胎内に入れていた指に力が入ってしまったものの、ルークはただ嬌声を上げただけだった。
同じ事を考えていたとわざわざ言う必要も無いだろうし、そもそもそんな事を告げるような性格をアッシュはしていない。
わかったとだけ頷いて、アッシュはルークの中から指を抜いた。
ルークが自分から、うつ伏せだった格好から仰向けへと変える。
はぁ、と熱い息を吐き眼の上に腕を置く姿を見ながらも、アッシュは己の履いていたパジャマを脱いだ。
ルークと同じように全裸になり、横たわっている躰に手を伸ばす。
ゆっくりとルークの上へとアッシュは乗りかかった。
足が絡み合い、互いの勃起しているペニスが触れ合い、腹、胸下辺りまで密着させる。
眼を隠しているルークの、汗をかいたおでこや頬に張り付いている髪を綺麗にしようと梳くと、ルークが腕をどかし、己の方を見た。
全てを見透かされるような、己と同じ翡翠の双眸。
シーツに広がる、己とは違う、聖なる焔の髪。
そして快楽の熱に浮かされ頬を赤く染めながらも、月光に輝く花のような笑顔は、明らかに己には出来無い表情だった。
「…泣いてたか。涙が零れてるぞ」
「そりゃ、まぁ…気持ち良かったし。そういうアッシュも、勃ってんじゃん」
「お前のあんな姿を眼にしてあれだけイイ声で啼かれて勃たなかったら、それは不能だろうが」
アッシュの言葉に、ルークは嬉しそうに笑みを深くした。
濡れた頬を撫でると、ルークも両手でアッシュの頬を包む。
そのまま少し引き寄せられ、アッシュは抗う事無くルークに顔を近づけた。
すぐそこに、同じようで同じでない顔がある。
「この月のせいかな…今のアッシュ、すげぇ綺麗」
またしてもアッシュの思っていた事と同じ事を、ルークが口にした。
お前の方が綺麗だ、という言葉が頭を過ぎったが、それを言おうかと口を開く前にルークが続ける。
「もちろん、いつもアッシュは綺麗だけどさ。格好良いし」
「なっ…」
「あ、顔赤くなった」
そこまで指摘され、アッシュは余計に顔を赤くした。
また何かを言おうとルークが口を開け、だが今度は何かを言わせる前に、噛み付くようにすぐそこにある唇に口付けた。
驚き、眼が見開かれる。
「…んぅ、ん、んん」
だが舌と舌を絡ませ互いの唾液が混ざる頃には、ルークの眼は閉ざされ、変わりに両腕がアッシュの首や背中へと回されていた。
中を弄り、綺麗な歯列をなぞり、下唇を甘噛みし、そしてまた深く唇と唇を合わせる。
「ん…っ、んは」
「っ、は…んむ…う、んん」
口で息が出来ない代わりに、鼻で息をすると相俟って、互いに微かに鼻にかかったような喘ぎが漏れる。
互いの顔に当たる鼻息や、絡まる柔らかな舌、ぴちゃ、ぴちゃ…と鳴る唾液の音が、余計に快楽へと足を運ばせる。
アッシュは濃厚な口付けをしている間にも、ルークの片足の膝裏を持ち、股を開かせた。
背中に回っていたルークの腕に、ぎゅっと力を込められる。
「ん、ん…ふ、は…」
唾液の糸が引き、それがプツンと切れた。
下にいたルークの顎には溜まった唾液が零れている。
アッシュは気持ち良さそうにとろんとした眼をするルークを見下ろしながら、両足を胸の方まで折り曲げた格好で腰を浮かせさせ、開いた股の間の濡れたアナルへと己のペニスを宛がった。
既にほぐれていた入り口は、アッシュのものを受け入れたがっているように蠢く。
ぐ、と己の腰に力を入れ、柔らかな壁を押し広げるようにルークの胎内へと埋めていった。
「ふあ、あ、あっ!あぅ、う…んあっ」
びくびくと躰を跳ねらせ喘ぐルークの瞳からは、また涙が流れた。
無意識にか逃げようと顔をゆるく横に振り、シーツの上で長い髪が波のように流れる。
ルークの胎内は、中へと導くように緩んだり、押し返すかのように締め付けたりを繰り返し、アッシュのものを嬲った。
「っく…ぅ」
「…んぁ…アッシュ、…っあ、あ…」
「……っは、は…ぁ」
己のものを全て入れ終わると、アッシュは詰めていた息を吐き出した。
ルークを見ると、涙をぼろぼろと零しながら、それでもアッシュを見ていた。
快楽に震えながらも縋るように伸ばされた手に、アッシュは身を委ねる。
ルークの首筋へと顔を埋め、ルークが同じようにアッシュの首筋に顔を埋め、抱き締められて。
アッシュの腕はまだルークの腰や足を支えている為に背中に腕を回してやる事は出来ないが、その代わり抽出を開始すると、ルークは躰を震わせしがみ付いて来た。
「ああ、ん、んう、は…あ、あ…んんっん!」
「っ…ルーク、っは、あ……く」
断絶的に締め付けられるたびに、アッシュもまた喘ぎ声を漏らした。
熱く柔らかく、それでいて締め付ける時には絞られそうになるほどにきつくなり、アッシュはルークから与えられる快楽に躰を震わせる。
それでもルークが感じるようにと、何度も中から引き抜き、そしてまた突くようにして押し込んだ。
「ルーク……っぅ」
「あ、アッシュ、ふぁ、あ!…くぅ、ん…ひ、あぁ」
引っかかれて背中に微かな痛みを感じ、だがアッシュは笑みを浮かべた。
胎内からの腸液や滲み出る精液が、抽出をするたびに入り口でじゅぶじゅぶと泡立ち、漏れ出たものがルークの腰に回しているアッシュの腕にまで流れてくる。
躰中が、二人して汗まみれになっていた。
ルークの躰の震えが一段と大きくなり、締め付けもまた一段と強くなる。
「っあ、ああ、ふあ、んぁああっ!」
「ぅ…あ、ぁっ、う」
艶やかな嬌声を上げ、ルークが腰からから顎までを逸らせ曲線を描いた。
アッシュもまた、ルークのイった強烈な締め付けに抗うように胎内の奥まで突き入れ、射精した。
「…大丈夫か」
「は、ぁ……ん、なんとか…」
荒い呼吸を整え、快楽にすすり泣く声を飲み込み、ルークはどうにかアッシュの声に答えた。
部屋に備えられていたバスタオルで、アッシュが簡単にだがルークの躰を拭いていく。
尻の間を拭かれても、いまだ快楽に浮かされた躰が無意識に揺れてしまい、だがそれ以上に疲れていて、もう羞恥を感じるのも億劫だった。
ルークの躰を拭いたアッシュは、今度は自分の躰の汗をふき取っていた。
いまだ流れる涙でぼんやりとする視界の中、月光に照らされて浮かび上がる青白いアッシュの姿は、改めて見てもやはり綺麗だった。
重い腰を引きずり、ベッドに腰掛けているアッシュの、己の方に向けられている背中に手を伸ばした。
「アッシュ…」
声をかけ、血の通っている暖かだけれど傷ついた背中に手を置き、そしてまた行為を行う前と同じようにキスをした。
アッシュは小さな溜め息を一つついただけで、何も言わなかった。
そういえば、先程アッシュの背中を引っ掻いてしまったような気がしたのだが、どうなったのだろうかと、そっと背中を撫でる。
綺麗な輪郭を描く肩甲骨の少し上辺りに、蚯蚓腫れが出来てしまっていた。
今はよく見えないが、きっと赤く腫れ上がっているだろう。
「これ…痛いか?」
「…いや。それよりも、もう寝るぞ」
「ん」
どろどろになってしまったベッドではなく、このベッドの少し離れた位置にまだ綺麗なベッドがあるのだから、きっとそっちで眠るのだろう。
裸のままのアッシュが隣のベッドの毛布を横に除けているのを見てそう思っていると、振り向いたアッシュにふわりと持ち上げられ、そしてすぐ隣へと下ろされる。
ひんやりと冷たく柔らかな感触は、熱に浮かされた躰にはとても心地良かった。
アッシュはカーテンを閉めてから、暗くなった部屋の中、すぐそばにあるこのベッドへと横になった。
そして、ばさりと除けていた毛布をかけられる。
同じベッドに寝ているのに微妙な距離を開けられて、ルークは少し眉を歪めた。
もそもそと横に移動し、仰向きになっているアッシュの腕にくっ付く。
「…なんだ」
「寂しいだろ、そんな離れられたら…」
暗闇の中でも、アッシュが盛大に溜め息を吐くのだけはすぐにわかった。
怒ったのだろうか、と落ち込み始めたルークに、けれどアッシュはルークの方に向く形で横になると、その裸体を抱き締めた。
「早く寝ろ」
「うん、…へへ」
嬉しそうに笑い、ルークはよりアッシュの躰へと自分の躰を摺り寄せた。
胸に頬を押し付け、隙間が殆ど無くなるくらいに引っ付く。
アッシュが頭上から呆れたように苦笑をする。
けれどもきっと優しい顔をしているのだろう彼に、ルークも笑顔を浮かべた。
トクン、トクンとアッシュの心臓の音が聞こえる。
それは生きている証。
「お休み、アッシュ」
「…ああ、お休み」
心地良いベッドの中、心地良い音と、そして心地良いぬくもりを感じながら。
二人は眼を閉じた。
そしてまた新たな朝が来た時。
カーテンの隙間から漏れる、そのささやかな陽だまりを二人で一緒に感じながら、笑い合おうか。
互いに抱き合い、キスをして。
おはよう、と。
言葉を交わそうか。
一人分の光に二人いる事を許してくれた、愛しき両親にも挨拶をしようか。
今日も、俺達は共に生きている、と。
愛してくれてありがとう、と。
心から、伝えたいから。
...end.
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生んでくれて、そして受け入れてくれたご両親に親孝行中。
お互いがお互いに、相手の事をいいなぁと思っています。
2006.03.23
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