柔らかな唇、熱い吐息

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 コンクリート剥き出しの階段を、小さな躰で駆け抜けていく。
 勢いのままビルの屋上のドアを開けると、視界に飛び込んできたのは、少しばかり欠けている月の浮かぶ闇夜。
 そして月と同じほどに鮮明な白をした、月下の奇術師などと持てはやされている気障な怪盗。

 つい先程盗んだばかりの宝石を月に翳している姿を認め、コナンはゆっくり、彼に近づいていった。


「よう、コソ泥」


 いつものように嫌味を含めて声を掛けると、怪盗もまたいつものように、優雅とさえ表される動作でこちらを向いた。


「おやおや、またいらっしゃったんですね」
「ああ、お前を捕まえる為にな」


 平静を装って言葉を返したが、一瞬ピクリと眉が動いてしまったのは、コイツが敬語なんざ使ってきたからだ。
 ここのところ、相対するたびに彼は怪盗紳士らしい態度を向けてくる。
 まるでどうでもいい存在に格下げされたようで、気に入らねぇ。

 強く睨み付けると、彼は小さな溜め息を零した。


「二度と来るな、と。何度も申しているでしょう?」
「バーロォ。コソ泥に来るなと言われて、本当に来ない探偵がいると思うのか?」


 これもまた、最近では常に行われる言葉のやり取りだ。
 何故コイツがそんな事を言うのか、理由は危険だからとわかっちゃいるが、はいそうですかと引き下がれるわけがない。
 相手は、犯罪者なのだから。

 いや、それは建前だ。
 コイツは犯罪者であるが、悪人ではない。

 彼の姿を見ると、緊張感に心が躍動するのだ。
 どんな警備やシステムであろうと掻い潜り、宝石を手に入れるほど、一筋縄では行かない存在。
 それでいて彼が絶対に殺人という犯罪を犯さないからこそ、純粋に推理を楽しみながら戦える。

 今日の今日とて、警察はダミーを追いかけて行ってしまったので、ここにいるのは自分だけ。
 コイツを追い詰められるのは俺だけだという自負は、間違っていないはずだ。


「全く、貴方という人は」


 呆れたように肩を竦める怪盗に、素早く腕時計を構えて麻酔針を打った。
 案の定避けられ、逆に瞬時に構えられた銃からトランプが飛んでくる。
 一瞬にして、一触即発。
 目の前に迫ってきたカードを避け、もう一発来る。
 そう思って身構えたが、どうしたのか、怪盗は銃口をこちらに向けてくるだけで打ってこない。


「……キッド?」


 いぶかしみ、彼の名を呟いた瞬間。
 彼は白いマントを大きく広げながら、こちらに思いっきり走ってきた。
 驚愕に目を見開くも、言葉を発するよりも先に抱き上げられる。

 聞こえてきたのは、ガンガンガン、と銃弾がコンクリートに減り込む音だった。
 彼の躰に視界を遮られている為、放ってきた相手がどこにいるのか確認は出来無い。

 キッドは自分を抱えて銃弾を避けながら、屋上の手摺りを飛び越え、夜空へと身を投げた。
 ばっと広がる、白い羽。

 空を飛んでいる間、互いに言葉は交わさなかった。
 強く抱き締められていて、しかも前を見続ける表情があまりにも真剣だったので、どう 言葉をかけるべきか迷っていたというのもある。

 無言のまま三十分ほど飛んで身を寄せたのは、十階建てマンションだった。
 最上階のベランダの一つに彼が足をついた瞬間、僅かに呻きが聞こえてくる。


「オメー、怪我してんのか」
「ちょっと、かすってしまっただけです」


 足下に下ろされ、そのままキッドは網戸と窓を開けて、靴を脱いで室内に入っていった。
 数秒後、パッと電気が点く。


「ここは私の隠れ家ですから、どうぞ遠慮せずにお入り下さい」
「……お邪魔します」


 彼に従い部屋に入り、窓とカーテンを閉めた。

 入ったリビングは、隠れ家にしてはソファやテレビ、その他色々なものがちゃんと置いてある。
 すぐ奥にキッチン、廊下、玄関ドア。
 間取り的に、奥には風呂場とトイレ、部屋が一室の1LDKか。

 キッドは救急箱を持って、シルクハットもモノクルも身につけたまま、ソファに深く腰掛けた。
 怪我は左足で、白いスーツが少し破けて赤く染まっている。
 ちょっとかすった程度というのは、嘘ではなかったようだ。
 もし銃弾が貫通なんてしていたら、確実に血は床まで流れている。


「俺が手当する」


 彼の前に立ち救急箱を奪うと、キッドは僅かに苦笑を零したが、止めはしなかった。
 床に座って、彼のズボンの裾を上げて、傷を確かめる。
 血が流れ肉が少し抉れているが、一週間もすれば癒えるだろう。
 だがこれでも十分痛いだろうに、よくポーカーフェイスを保っていやがる。

 まずは、流れている血を拭かねぇと。


「タオルは洗面所か?」
「ええ。手前側のドアが洗面所です。タオルは入って左側の、細長い棚の中にありますから」
「わかった」


 言われた通りの場所で見つけたタオルを数枚取って、一枚は濡らしてから戻った。
 彼の患部の上をタオルで縛り、濡れたタオルで傷口を覆う。
 やはり痛いようで、足に力が入った。

 血を拭き取って彼の左足を抱えてタオルを宛て続けていると、だいぶ痛みが和らいだのか、キッドが話し掛けてきた。


「名探偵は、どこも怪我してねぇみてぇだな」
「……ああ、オメーが拾ってくれたからな」
「そうか。ったく、だからいつも来るんじゃねぇって、言ってんのによ」


 彼の言葉は、ぞんざいなものに変わっていた。
 表情も不敵な笑みではなく、僅かながら唇を尖らせて、不機嫌だと全面に出してきている。
 だからか、素直に非を認められた。


「そうだな。今回は俺が悪かった。オメーにこんな怪我させちまうなんて、情けねぇ」


 わかっちゃいたんだ。
 彼が口調を変えていたのは、俺を遠ざけようとしていたからだと。
 今回のように、キッドを狙う連中から撃たれる可能性は、いくらでもあるからと。

 だがそれが、俺は気に入らなかった。
 自分の身くらい、自分で守れる。
 俺を見下してるんじゃねぇよと、思っていた。

 でも――――、違ったんだな。

 ようやく彼の真意に思い至って、つい笑みが零れてしまう。


「……なに笑ってんだよ」
「いや。実は俺、オメーにすげぇ大事にされてたんだなと思ってよ」


 キッドは何も言わなかった。
 沈黙が肯定を示しているくらいわかるだろうに、否定しない。


「以前のオメーは、銃弾が飛んできても俺を守ろうとはしなかった。俺なら守らなくても自分でどうにかすると、信頼していたからだ。手出しするのは、むしろ侮辱になると。でも今日はわざわざ俺の方に走ってきて抱えて、一緒に空を飛んで安全な場所に避難した。信頼が無くなったからかと考えられなくもないが、それは違ぇ」


 治療し終えた足に、包帯を巻いていく。
 彼はじっとこちらを見下ろしてきて、俺の言葉を聞いていた。


「俺を守りたくなっちまったんだよな。俺が、オメーを追いかけて守りたいと思っているように」


 遠ざけようとしたのは、今日のように危険に陥った時、どうしても躰が俺を守る方に動いちまうから。


「……なるほど。どうりで、何度危ねぇから来るなって言っても、全く聞かなかったわけだ。つまり名探偵は、俺に惚れちまってんだな。俺が、オメーに惚れちまってるみてぇに」
「そうなるな」


 包帯も巻き終え、ズボンを元に戻した。
 彼の横に座ろうとしたら、脇に手を入れられて躰を持ち上げられ、向き合った状態で太腿に座らされる。

 自分の小さな躰は、抱き締められると完全に包まれてしまった。
 だいぶ情けないが、伝わってくるあたたかな温もりは、正直すげぇ嬉しい。

 まるで宝物を手に入れたような、優しくも強い包容。
 名探偵……と。
 感極まったような、深くも甘やかな声。

 手を伸ばし彼の頬を包み下から顔を見つめると、キッドは瞑っていた瞼を開き、視線を合わせてきた。
 現れた紫の眼球は、片方はモノクル越しだが、美しく艶やかだ。
 こんな間近で見るのは初めてで、吸い込まれそうな錯覚に陥る。
 それほどに魅了される。

 互いの間に、言葉など必要ない。
 そう感じた事は今までに何回かあったが、久しぶりにその感覚が襲ってきた。
 唇を寄せていく緩やかなスピードも、目を閉じるタイミングも、きっと同じ。

 触れた唇は、しっとりとしていて柔らかかった。








 ベッド、あるんです。
 そう言ったのは、当然この部屋の持ち主であるキッドで。
 敬語に戻った口調に、ああコイツ今すげぇ緊張してるんだと悟った俺は、そうかと頷いた。

 首に腕を回せば、抱き上げられて奥の部屋に連れていかれる。
 足の怪我のせいか、歩く動作がぎこちない。

 電気を点けて、ベッドに下ろされると、キッドは隣に乗り上げてきた。
 やはり言葉は交わさなかった。
 むしろ、互いに緊張して言葉が出てこないだけかもしれない。

 彼へと伸ばす自分の手が震えてしまっていて、つい舌打ちしたくなった。
 だがそれでも彼のシルクハットを取り、床に落とす。
 モノクルは迷ったがそのままにしておき、スーツのボタンを外した。

 キッドもまた、こちらのジャケットのボタンを外してきた。
 そしたら次の瞬間にはジャケットが彼の手の中にあって、相変わらずな奇術に舌を巻く。

 俺もキッド自身に手伝ってもらいながら、彼のスーツを脱がしていった。
 ネクタイと、変声機蝶ネクタイを外すのは同時に。
 シャツのボタンも互いに相手のを同時に外していき、先に終えたキッドが俺の躰を抱き寄せ、心臓あたりに唇を押し付けてくる。


「っ……、……」


 柔らかな唇の感触、吐息の熱さ。
 トクトクと脈打つ鼓動が彼に伝わっていると思うと、結構気恥ずかしい。

 胴に顔を埋められて、彼の頭を抱える状態になった。
 シルクハットの下に隠れていた髪は、撫でてみるととても柔らかい。
 頭上にキスすると、すりっと頬を擦り寄せてきた。


「名探偵……」


 いつの間にか手袋を取っていた魔術師の手に、ゆっくり服を脱がされ、躰中を撫でられた。
 唇もあちこち辿っていく。
 首筋に、腕に、手の甲に、指先に。
 キスマークを付けるわけではなく、ただ表面を触れていくだけの、優しい唇。
 熱い吐息も肌を撫でていき、気持ち良さに躰が震えた。

 目を閉じて俺に触れるのに夢中のキッドは、幸せそうにほんのりと頬を赤く染めていた。
 男の顔を綺麗だと感じたのは、これが初めてだ。


「ん……オメー、すげぇ綺麗で、すげぇ可愛い」


 可愛いは、きっと彼が今まで一度も受けた事の無い賛辞だろう。
 しかしゆっくり瞼を上げてこちらを見返してきたキッドは、ふわりと、それこそ綺麗で可愛い笑みを浮かべた。

「ありがとうございます。名探偵も、とても綺麗でとても可愛らしいです」

 なるほど、好きな相手から幸せそうに告げられた賛辞は、女に言うような言葉でもすんなりと受け入れられるものらしい。
 むしろこんな甘い雰囲気で、胸に沸き上がる想いのまま告げられるのだから、誉め言葉としては最上級レベルか。


「……、ん……は」


 眼鏡も取られ、下も全部脱がされて、自分ばかりが素っ裸にされていた。
 彼の指の長い綺麗な手が尻を撫でてきて、太腿、脹ら脛と下りていく。


「名探偵の躰、どこもすべすべで柔らかい……」
「……そりゃ、子供の躰だからな」


 ベッドに横たわらされると、踵を持たれて足の爪先にキスされ、唇が膝へと上がっていった。
 太腿、内股へ。
 足の付け根に顔が埋められ、そこで初めて強く吸われた。
 チリッとした僅かな痛みに、吐息が漏れる。
 その後ちゅっと、労るようにリップ音を鳴らしてキスされ、離れていった。


「ん……名探偵に、キスマーク付けちゃいました」


 嬉しそうに言ったキッドは、今度はいくら躰中を愛撫されて気持ち良くなっても勃起しない、小さなペニスを咥えた。
 艶やかなキッドの唇が、俺のペニスを口に含んで舐めている。
 うっとりと酔いしれているように目を細め、俺の顔を見つめながら。
 胸に込み上げてくるのは、愛おしさと歓喜だ。


「っ……、う……、ん、は……」


 舌の生温かい感触に、躰が震える。
 ぴちゃり、ぴちゃりと音を立てられると、どんどん興奮してくる。
 背中や尻や足を撫でて愛撫されるのも、気持ち良い。
 しかし残念ながら、射精感は沸いてこない。
 それよりも、早くコイツを気持ち良くして善がらせてぇ。


「は、キッド……どうせ勃たねぇんだから、そろそろ交代しろ」


 上体を起こし、彼の顎に手を沿えれば、すんなり離れていった。
 テラテラと艶めかしく光っている唇にキスを一つして、彼がまだ身に着けていたシャツを肩から落とす。
 キッドは自らシャツを袖から抜くと、躊躇いがちにだがベッドに横になった。


「あの……触って下さい。貴方の手に、触れられたいです」


 くそ、恥ずかしそうにしながらも要求してくるなんて、可愛いすぎるだろ!

 滅茶苦茶にしてやりたい欲求をどうにか抑えながら、首筋に唇を寄せ、彼がしたようにそっと触れていく。
 気持ち良さそうに躰をくねらせるキッドは、とてつもなく艶めかしい。

 腕を撫でながら鎖骨を辿り、乳首を舐めると、びくりと躰が跳ねた。
 舐められるとは思っていなかったのか、驚いた顔をして俺を見てくる。
 ちろちろ舌で転がせば、躰は小刻みに震え、可愛い喘ぎも聞こえていた。


「ん、やぁ……、ちょ、ん、……名探偵、乳首、弄らないで、くださ」
「こんな可愛い乳首、弄るなって方が無理だぜ」
「そんな、……ひゃっ、あ、ぁん」


 両方の突起を摘み、くりくりと指で捏ねる。
 男でありながら女に簡単に変装出来てしまう彼は、常人よりもかなりほっそりとしていて柔らかな躰だ。
 乳首も綺麗なピンク色で、男にしてはふっくらとしている。
 とにかくそそる躰を見ていたら、もっと苛めたくなった。


「オメー、乳首すげぇ感じるんだな」
「ぅう……俺だって、知らなかっ、ゃ……ん」


 弄っていたら、キッドの乳首はつんと立ち上がった。
 それを見たら満足出来たので、今度はベルトに手を掛ける。
 前をくつろげ、腰周りを掴み、ずるずる脱がしていく。
 もちろん、下着も一緒に。
 恥ずかしそうにしながらも脱ぐのを手伝った彼は、自分と同じように一糸纏わぬ姿になった。

 足の爪先に唇を寄せ、甲に口づけ、ゆっくり上がっていく。
 怪我の手当てをしている時にも思ったが、すね毛なんて一切生えていない躰は、女性に変装する為だろう。

 包帯の上を少しだけ撫でて、股の間に入った。
 足の付け根にキスマークを付けてから、すでに緩く勃起しているペニスの先端に、ちゅっとキスをしてやる。
 キッドが気に入るように、あえて可愛く。


「ぁ、名探偵……ん、あぁ、あ」


 子供の口の中には入らないので、玉や竿を揉みながら、尿道口をクリクリ舌で弄った。
 すぐに先走りが出てきて、苦みを感じる。
 それに先程よりも、ペニスが熱い。


「ん……、気持ち良いか? キッド」
「あ……イイ、すごく、気持ちい……、あ、ぁん」


 身悶えているうちにモノクルが外れたようで、完全に素顔を晒していた。
 目を瞑って感じ入ったり、こちらを見てきたりと、本当に気持ち良さそうだ。


「オメー、滅茶苦茶可愛いな」
「そんな、名探偵の方が、ぁ……」


 愛撫を止めると、キッドは困惑げに自分の股を見下ろした。


「え、なんで止めて……」


 その表情があどけなくて、キッドの中身がそこらにいるようなただの高校生なのだと、初めて実感した。
 あの研ぎ澄まされた気配を纏ったキザったらしいコソ泥とあまりにも違いすぎて、感動すら覚えるほどに。


「うつ伏せになれよ。俺に、オメーの背中を預けろ」


 この言葉にどれだけの想いを籠めたか、彼は気付いたらしい。
 顔を真っ赤にして、しかも両手で隠して左右に揺らす。


「うー、名探偵ってばすげぇ格好良い……っ」
「そういうオメーは、マジで可愛いじゃねぇか」
「小せぇのに、小せぇのにぃ!」
「……なるほど、よっぽど虐められてぇらしいな」


 にやりと笑ってみせたら、彼はヒッと喉を詰まらせ、慌ててうつ伏せになった。
ったく、どこまで可愛いんだか。

 背中に手を置き、ひくりと小さく跳ねた躰を落ち着かせるように撫でる。
 きめ細やかで健康的な肌だ。
 このしなやかな背には、多くのものが背負われている。
 それに気付いた時、コイツを好きになっていた。
 ほんの僅かでも預けてほしいと願い、追いかけるようになった。

 ゆっくりと手を下に滑らせていき、腰を通りすぎ、尻を撫でる。
 僅かに跳ね、それでもクッションに顔を伏せて何も言ってこない彼に、むしろ緊張しているのが窺えた。
 尻の谷間を開けば、きゅっとした窄まりが露わになる。
 キッドの最も恥ずかしい部分を見ているという事実に、興奮する。


「すげぇ、エロくて可愛い」
「うあ。そんな、言われると……恥ずかし、……み、見ないで、下さい」


 指摘されたのが余程恥ずかしかったのか、こちらを見てきたキッドの目には、うっすらと涙が滲んでいた。


「……オメー、もしかして今、滅茶苦茶恥ずかしい? だから敬語になってるとか?」
「なっ……ち、ちが!」


 もう緊張は取れただろうに、それでも敬語のままなので、もしかしてと聞いてみれば。
 カァっと顔を赤くして、再びクッションに顔を押し付けてしまった。
 それがもう可愛くて、つい喉を鳴らして笑ってしまう。


「そうだよな、素の状態じゃ我慢出来ねぇよな。こんな子供に、ケツの穴見られてるなんて」


 今までの付き合いで、素のコイツが明るくてやんちゃな普通の男だという事はわかっている。
 キッドとして大衆の前で気障に振舞っている姿とは、大違いの性格だ。
 そりゃこんな状態じゃ、必死にポーカーフェイス保ちたくもなるわな。

 なんて思いながらも、もっと恥ずかしくしてやりたくて穴に舌を這わすと、びくっと大きく腰が跳ねた。


「や、やだそんな……やめ、舐めるなんて、汚い、ですからっ」
「うっせぇ。俺が舐めてぇんだから、オメーは黙って感じてろ」
「そんな、ぁ、あ……」


 表面を唾液で濡れまくるくらいに舐めてから、閉じている穴に舌を入れようと、クリクリ抉る。
 もどかしい快楽なのだろう、腰を左右に揺らしてベソを掻き始めた。
 はぁ、もうマジで可愛すぎる。


「ぁ、あ……名探偵、名探偵ぃ……ふぁ、あ」


 舐め回しまくって、しばらくして、指を熱い体内に入れて前立腺を弄る。
 その頃には、ひぃひぃ泣いて自身のペニスをしごくくらいになっていた。
 羞恥よりも快楽が勝ったらしい。
 尻を突き出した格好は滅茶苦茶エロくてそそるが、顔が見られないのは勿体無ぇな。


「キッド、俺を見ながら弄れ。な?」
「あぁ……、あん……名探偵……」


 指を抜くと、キッドは素直に従った。
 背をクッションに預け、戸惑いがちにだが足を開き、涙に濡れた紫の双眸でこちらを見てくる。
 反り立っているペニスは、どろどろに濡れていた。
 だがそこにはあえて手を出さず、また収縮している穴に指を入れて、嬲る。

 くちくち音が鳴るくらいに緩くなって蠢いている腸壁は、ペニスを入れたらすげぇ気持ち良さそうだ。
 子供の躰である事が、本当に残念でならない。


「ぁ、んんっ……名探偵、あ、あん」


 キッドは再び自分のペニスを弄り、喘いだ。
 片手でサオを擦り、もう片方で尿道口を弄っている。
 ぽろぽろ涙を零し、涎まで垂らしていて、とてつもなく可愛い。

 穴もきゅうきゅう蠢いているので、そろそろイくのだろう。
 促すように前立腺を撫でると、キッドは躰をガクガク揺らした。


「あ、あ、ふぁ……、見て、見ていてくださ……、あ、名探偵、名探偵」
「ああ、見てるから、イけよ」
「んっ、……ん、あ、イく、イきま、あ、ん――……っ」


 ぎゅっと目を瞑り、躰を強ばらせ、腸壁がきゅううと締め付けてくる。
 ドプドプと飛び出る精液が、彼自身の腹に掛かった。


「あ、あ……ん、……」
「ここ、俺が元に戻ったら絶対に入れるからな」
「あ、……はい、待ってます……」


 射精し余韻に震える躰の、前立腺を緩く撫でる。
 するとキッドは、熱い吐息を零しながら、うっとりとした表情で頷いた。















 ふと意識が浮上し、優しく髪を梳かれている事に気付く。
 包むように抱き締められていて、あたたかい。
 トクトクと、耳を押し付けている箇所からは、緩やかな心音が聞こえてきている。

 昨夜、互いに躰中を愛撫した後、裸のまま抱き締められて眠った。
 素肌を合わせているのはとても気持ち良いが、この小さな躰では彼の背に腕を回しても、 しがみついている程度にしかならないのは、やっぱだいぶ情けねぇな。

 顔を上げると、キッドはふと微笑した。


「起きたんですね、名探偵。おはようござます」
「……ああ、おはよう」


 その笑みはとてつもなく甘やかで、気怠げな様子がもの凄く色っぽい。
 朝っぱらから相当な破壊力だが、残念な事にこの躰だと少し体温が上昇して鼻血が出そうになるくらいだ。
 はぁ……。

 悔しいので、とりあえずちゅっと、触れるだけのキスを贈る。
 するとキッドは、顔を赤くして、ぎゅっと強く抱き締めてきた。
 やっぱりコイツを翻弄するのは、気分が良い。

 と、思いきや。


「もう朝からこんな可愛いなんて、反則です! 抱き締めるのにもちょうど良いサイズですし、もういっそこのままでいてほしい……」
「おいコラ、ふざけんな。戻んなきゃオメーを抱けねぇだろうが! 昨夜、待ってるっつったじゃねぇか!」
「言いましたけど、でも名探偵は今の方が絶対可愛いじゃないですか! ついでに言えば、この姿であれば私の事情に手出ししている余裕なんて無いでしょうしね。元に戻るまでは、自分の事にだけ集中して下さいね。まぁ名探偵が私の力を欲する時は、いくらでもお貸ししますが」
「こんにゃろ……」


 それはもう憎らしいくらいに綺麗な笑みでムカつく事を言われ、こめかみが引き攣った。
 確かに子供の姿では、そもそもあまり自由に動けない。


「ああ可愛いです、私の愛しの名探偵。このままずっと抱き締めていたいです!」


 いやでも、これはこれで、美味しい気が……。
 そもそもこうして素っ裸でも恥ずかしげもなく抱き締めてきて顔中にキスしてくるのは、 俺の躰が小さいからだろ?
 もしかして工藤新一に戻ったら、全力で逃げられるんじゃ。

 ならばいっそ、このままでも良いかもしれねぇなぁ。
 と、我ながら呆れる事を思いつつも、彼の胸に顔を埋めた。





  ...end.

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コKで、色っぽい雰囲気を目指してみました。

2013.11.16
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