治療、だよな? サンプル
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「頼むキッド、俺を助けてくれ。一生のお願いだ」
月が美しく輝く夜。冬の研ぎ澄まされた清浄な空気の中、何故か土下座をする男がいた。
彼の名前は工藤新一。
日本で知らない者はいないんじゃないかというくらい、有名な探偵だ。
出会った当初は薬のせいで子供だったけれど、先日ようやく高校生に戻れたようで、ニュースで工藤新一の姿を見掛けた。
その時は、とても凛々しい様子でインタビューに応じていたんだが。
「ええと、とりあえず土下座は止めねぇか?」
「じゃあ俺の願いを聞いてくれるんだな!」
ガバッと身体を起こしたかと思えば、俺の両手を握り、迫ってくる。
ちょ、顔が近い!
「わ、わかったから離れろ!」
そんなに顔を近付かれたら、胸がドキドキしちまうだろうが!
怪盗キッドは性別不明とされているけど、実際は花も恥らう女子高生だからな?
俺は怪盗キッドだ。
そして今夜はビッグジュエルを盗む為に予告状を出しており、無事入手した。
しかし高校生に戻った名探偵に追い掛けられ、逃げ切れずに腕を掴まれたわけだ。
スペック高すぎじゃね?
そのまま壁ドンされて、捕まえたと耳元で囁かれたまでは焦って冷汗が出まくったけれど、そのあと何故か土下座されたのである。
「それで、何を頼みたいんだよ。助けてくれって言ってたけど、俺に出来ることじゃねぇと断るからな」
「見りゃわかるが、ようやく元の姿に戻れたんだ。だが後遺症なのか、勃起はするんだが射精出来無くて」
「……はい?」
「だから俺のを、触ったり舐めたりしてくれ!」
は、はぁああっ?
つつつつまりそれって、名探偵のお、おちんちんを、俺に愛撫しろと……?
「オメーにしか頼めないんだ。これでも信頼してるんだぜ。キッドだったら揶揄せず、親身になって頑張ってくれるんじゃねぇかって。それに女怪盗なら、エロいことにも慣れてるだろ? だからさ」
た、確かに女怪盗と言えば、悪女っぽく艶やかで服装も過激なイメージがある。
でも俺は、しょ、処女だし、そういう知識もほとんど無いぞ。
ちなみに名探偵には、女であることはバレている。
江戸川コナンの時に、何度か股間を触られたし、アレな声を出してしまったから。
あの時の名探偵、顔が真っ赤だったな。
俺も照れちまって、からかうことは言わなかったけど。
あ、だから今回も、俺なら揶揄しないと思ったのか。
名探偵が、また顔を近づけてきた。
シルクハットは地面に落ちてしまっているから、月光で目元が見えるだろう。
俺の顔、名探偵とかなり似ているのに、それでも俺とエッチなことをしたいんだろうか。
というか、高校生の名探偵、すごく格好良いな。
こんな間近から見られたら、恥ずかしくて頬が熱くなっちまう。
しかも腰まで抱いてくるし!
「駄目か? キッド。駄目なら警察に連行するけど」
「断るという選択肢を与えられていない!」
「ようやく捕まえられたのに、逃すかよ。本当に困っているんだから助けてくれ。な?」
ううぅ、そんな縋るような顔されても……め、名探偵のおちんちんに触らないといけないんだろ?
俺にそんなことが出来るだろうか。
すごく悩んだけれど、悩んでいるうちにお姫様抱っこされて、スケボーで名探偵んちに連れていかれた。
抱き上げられた瞬間ビックリしたし、羞恥で顔どころか全身が熱くなった。
そしたら可愛いとまで言われちまう始末。
ううぅ、恥ずかしいしドキドキした……。
名探偵んちの玄関前で降ろされ、しかしすぐさま腰を抱かれて、逃げる隙を与えられなかった。
ここまで来たら、さすがに逃げないぞ?
そもそも捕まっちまった俺が悪いわけだし。
そりゃ考えたら心臓壊れそうだけどさ。
でもこれは治療なんだよな?
名探偵にとっては死活問題で、藁にも縋りたいから、俺に頼んできた。
理由はさっき名探偵が言っていた通りだと思う。
揶揄しないとか、女怪盗だからとか。
あとは相手が世間的に後ろめたい存在なので、後ろめたいことをしても大丈夫という安心感もあるかもしれない。
だって名探偵には、蘭ちゃんという恋人がいる。
でも彼女には、病気を知られたくないと。
ったく、格好付けたがりなんだから。
「ほらキッド、こっちが俺の自室」
律儀に説明されたけど、知ってるぞ。
侵入したことあるから。
名探偵の家には嫌な記憶もあるので、あまり近寄りたくなかったんだけどなぁ。
彼の部屋に入り、周囲を見渡す。
ちゃんと生活しているようで、綺麗にされていた。
あとすでに、タオルが何枚か用意されている。
最初から俺を連れてくるつもり満々だったわけですね、はい。
「じゃあさっそく、お願いするわ」
「仕方無いからやってやるけど、でもその……射精するまで、ずっと続けるのか? どれだけ触っても、治らなかった場合はどうするんだよ」
「治るまで付き合ってくれ。頼む」
真摯に頭を下げてくる名探偵に、困惑してしまう。
お前、そんなキャラだっけ。
もっと偉そうだっただろ?
特にキッドである俺に対しては。
お互いライバルだと認め合っているからこそ、負けたくないから。
つまりライバルである俺の力を借りなければならないほど切羽詰っていて、絶対に治したいと。
名探偵はベッドに腰掛けると、ベルトを緩めた。
そしてパンツから、ペ、ペニスを出してきた。
これが男のアレか。
もちろん初めて見たけど、意外にもあまり嫌悪感は湧かなかった。
まぁ人間として必要な部分だからな。
それにその、名探偵のモノだし。
他の男のだったら、確実に無理だと断言出来る。
名探偵は俺が慣れていると思っているんだよな。
女怪盗だから。
実は慣れてないって、正直に言うべきだろうか。
でもそれはそれで、負けた気がしてくる。
コナンの頃からだいぶ追い詰められていたこともあって、頭を下げられてまで頼られるのは、実は気分が良い。
「よ、よしっ」
小声で気合を入れて、名探偵の足の間に座った。
出されている男性器に顔を近付けていくと、彼はそれを持ち、俺が咥えられるように先端を向けてきた。
唇が触れる瞬間、ぎゅっと目を瞑る。
ピトリと、生暖かい感触がくっ付く。
……うん、平気そうだ。
ドキドキしながらも舌を出して、ちょっと舐めてみたけれど、味はよくわからない。
「そのまま自分で持ってくれるか?」
声を掛けられたので、目を開けて名探偵を見上げてみた。
彼は、頬を高潮させて目を細めていた。
色っぽい表情に、ドキリとしてしまう。
なんだか急激に恥ずかしくなってきて、顔が熱くなった。
ううぅ……名探偵ってば、もしかして俺の気持ち、知ってるんじゃねぇの?
名探偵が蘭ちゃんを好きなのは最初からわかってたから、諦めていた。
でもせめて彼の心に残る存在でありたくて、ライバルの位置に納まった。
そのあと女だとバレちまったり、でも名探偵が蘭ちゃんと付き合うことになったみたいな話を聞いたり。
その時、滅茶苦茶ショックを受けたのは内緒だ。
とりあえず言われたとおり持とうとしたけど、手袋をしていたことに気付き、慌てて外す。
敏感な場所を布越しに触ったら、傷付けてしまうかもしれない。
まったく、好きでもない相手にこんなことさせるくらいなら、不能になっちまえ! なんて思わなくもないけどな。
でも俺を捕まえて、土下座してまで頼んできたので、今回だけは譲歩してやると決めた。
以下オフ本にて。
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2019.12.28発行
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