らぶ☆ぱにっく サンプル
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1.
その夜、天才マジシャン黒羽快斗は、とあるイベントにこっそり参加していた。
イベント名は「失恋した男達の会」。
『告白したけどフラれてしまった。好きになった人は彼氏持ちだった、むしろ既婚者だった。もう何年も片想いで、告白しないまま諦めてしまった、そんな方々。酒を飲んで美味いものを食べて、失恋した気持ちを吹き飛ばそう!』
というコンセプトの軽いイベントである。
男達の会とあるように、参加資格は男のみ。
飲酒込みなので二十歳から三十五歳。
三十五歳以上だとバカ騒ぎして吹っ切れるというノリではなくなりそうなので、適した条件だろう。
俺は現在二十三歳だから、参加が可能。
そして最も重要な条件が、最近失恋した人、新たな恋が見つからない人というもの。
俺には、ずっと片想いしている相手がいる。
ソイツの名前は工藤新一。
初めて出会ったのは五年前で、当時の彼は薬のせいで小さくなっており、江戸川コナンと名乗っていた。
その事実に気付く前は生意気なガキだと思っていたけれど、当時から有名だった高校生探偵、工藤新一だと知ってからは、好敵手と認識するようになった。
キッド犯行予告に合わせて名探偵が来て対峙することもあれば、流れで手助けすることもあった。
彼に助けを求めることも。
敵愾心や好奇心が、恋心に変わったのはいつからだろう。
気付けば好きになっていた。
でも名探偵は幼馴染の蘭ちゃんが好きだったし、いつの間にか彼女と付き合っていた。
ちょっと悲しかったのは事実だけど、それ以上に早々に失恋出来たことに、安堵した。
だって俺は男だ。
そして名探偵も男だ。
男が男に惚れるなんて、ほぼ無い。
俺だってたまたま彼を好きになったけれど、本来なら女性が好きだし。
アイツが性別を越えるくらい、鮮烈に心に刻み込まれる人間だっただけ。
だから、もしかしたら同じ気持ちを返してくれるかもしれないなんていう、淡い期待をずっと抱き続けずに済んだのは幸運だった。
早々に諦めて、彼らの様子を遠くから眺められた。
キッドとして目的を果たしたのと同時期に名探偵も元の姿に戻り、黒の組織との問題で多忙になっていた為、別れの言葉を交わすことも無かった。
こちらから連絡を取らない限り、俺達が相見えることは無い。
そしてそのまま疎遠になった。
あれから五年。
俺は高校を卒業すると渡米し、二十歳でFISMのグランプリを獲得した。
それから今までマジシャンとして活動している。
日本でショーを開催したのは、今回が初めて。
今までアメリカでしか活動していなかった為、日本での知名度は低いかなと思っていたけど、そんなことはなかった。
帰国した途端、空港でたくさんのファン達に出迎えられてビックリしたし、ショーのチケットは全日程分が完売していた。
日本奇術協会から全国で合計五十回以上は公演してくれと頼まれたものの、正直多すぎると思っていたのに。
それほどに、FISMでグランプリ獲得という名誉は、日本にとって快挙なことだったらしい。
しかも二十歳という若さ。
親父も同じ年で獲っていたが、昔と今じゃ注目度が違う。
ネットが普及している現代。
様々な情報が簡単に手に入る。
俺がグランプリを獲ったという情報も、簡単に日本中に広まったそうだ。
しかも顔が、あの名探偵とそっくりなイケメンというのも注目された理由だと、寺井ちゃんが教えてくれた。
ちょっと複雑。
俺の方が、アイツより格好良いよなぁ?
とにかく雑誌で何度か特集されていたり、アメリカで受けたインタビューがネット公開されていて、それがニュースでも取上げられたりと、知らぬ間に日本でも大人気になっていた。
帰国して二ヶ月経った現在、東都と大阪合わせて五十回のショーは先日無事終えたものの、いろんな雑誌のインタビューを受けて写真を撮られ、マジシャンとしてテレビ出演までしていた。
三ヵ月後からは再び五十公演することも決まっている。
予想外の状況に、少々困惑気味である。
そんなわけで知名度があまりにも高すぎるので、ネットでたまたま見つけたこの催しも、変装して偽名で参加していた。
失恋して、五年も経っているのに……俺はまだ、名探偵に恋をしている。
いまだにこの想いを抱えたまま。
そろそろ新しい恋が始まっても良いのに、残念ながらアイツ以上に好きになれる相手が見つからない。
もちろん、アメリカでは様々な出会いがあった。
渡米してすぐに同じ志を持つマジシャン達と出会ったし、俺のマジックを気に入ってくれて、アシスタントになってくれた人達もいた。
プロになってからも、仕事の関係者やファンなど、本当に多くの人と関わってきた。
それでも、アイツ以上に魅力的な人間はいなかった。
男女問わず何人からも告白されたし、稀にセックスの誘いもあったが、全て断った。
俺が触れたいのは、名探偵だけだから。
別にアイツを好きなままでも誰にも迷惑は掛からないから、無理に忘れる必要は無いけれど。
それでもどこかでマジックショーをやっていないかとネットで探していて、たまたま見つけた関係無いイベントに参加しても良いかなと思うくらいには、想いが褪せていないのだ。
ちなみに名探偵は今、FBI御用達とまで言われているほどに実力を認められている。
黒の組織を壊滅させたことでアメリカでも有名になり、しかも殺人事件に対しての解決率は100%という数字を出している男だ。
日本では以前にも増してメディアで取り上げられるようになっていたし、最近はFBIからの依頼で渡米しているからか、あっちでもニュースで見かけることがあった。
日本から遠く離れた地で、名探偵とバッタリ会っちゃったりなんかしたら運命的だよな、なんて乙女みたいなことを考えたりもして。
でも当然ながら、そんな偶然は一度も起こらなかった。現実とは所詮そんなもんである。
ともかく今はイベントだ。
会場は三階建て、ホールも小さめで、人数は五十人ほど。
参加費は八千円と少々高めかもしれないが、それに見合うだけの料理がずらりと並んでいる。
中略
朦朧としながらも、名探偵の家に着いた。
玄関前に下りて、ほっと一息。
良かった、途中で意識を失って墜落するようなことがなくて。
以前時々侵入していたように、ヘアピンで鍵開けしようとする。
でも思うように指先が動かず、なかなか開いてくれない。
早く名探偵に会いたい。
会って、セックスして、それで……あれ、そういえば。
俺は今、発情しているよな。
そして発情している間の記憶は、絶対に残らないと言われた気がする。
つまり紅子と話した内容も、名探偵の家に来たことも、記憶に残らないと。
セックスしている最中のことなんて、完全に忘却の彼方だろう。
せっかく彼に抱いてもらえるのに、忘れてしまう。
もちろんアイツが忘れてくれるのは、ありがたい。
むしろそうでなければ、ここに来なかった。
彼には彼女がいるのだ。
魔法のせいで抗えなかったとしても、浮気しちまった記憶なんて残らない方が良いに決まっている。
でも俺まで忘れるのは、嫌だ。
もしどうしても抗えないのなら、せめてビデオに撮って証拠を残そう。
キッド時代から、小型カメラは常備している。
あと自分に何が起こったか、書いておかなければ。
バッグの中にハンググライダーをしまい、まずは手帳に、男性妊娠のことと紅子に話を聞くこと、初エッチを撮影する旨を書いた。
視界がぼやけているし、躰が震えるしで、きちんと書けているかは定かでない。
だが明日の俺に向けて、なんで名探偵の家で起きたかわかるようにしておかないと、絶対混乱する。
カメラも出して起動させてから、今度こそ玄関の鍵を開けた。
ペンを握って指先に感覚が戻ったからか、ものの数秒である。
玄関を潜り、そこらにバッグを置いて、カメラとメモ帳だけ持って気配を探った。
リビングか。近づくと、明かりが漏れていた。
この先に彼がいると思うと我慢出来無くて、すぐさまドアを開けた。
限界だ。
早く抱いてほしい。
疼く尻の中に、チンコを突っ込んでほしい。
「誰だッ!?」
ドアの音がしたからか彼はソファから立ち上がり、警戒態勢を取って睨んできた。
ああ、名探偵がいる。
懐かしさと愛おしさで胸がいっぱいになる。
好き、好きだ。
大好き。
近付くと、彼は大きく目を見開いた。
「――キッド、なのか?」
「名探偵。早く、早く俺を抱いて……?」
キッドだと瞬時にわかってくれたことが嬉しくて、愛しくて、両手を彼へと伸ばした。
そのまま抱き付こうとしたけれど、手にメモ帳やカメラを持っていたことに気付き、思い止まる。
そうだ、セックスを撮影するんだった。
ソファにレンズを向けておけば良いだろうか。
ズームインやズームアウトは自動でするし。
ふらふらして、立っていられなくて。
ソファに座り、近くのローテーブルにカメラとメモ張を置いた。
レンズはちゃんとこちらに向ける。
置いた直後、ソファに押し倒された。
いきなりで驚いたけど、覆い被さってくる名探偵は、俺と同じように呼吸が荒くなっていた。
熱の篭った目で、間近から見つめられる。
もう俺の匂いに煽られて発情したのか。
「キッド、……キッド」
ちゅっちゅっと、唇にキスされた。
好きな相手とキス出来たことが嬉しい。
それに俺を呼ぶ声が柔らかくて優しくて、幸せになる。
「ん、……名探偵、ん、んむ……」
唇を食まれ、舐められた。
咥内に舌が入ってきたので俺からも出せば、互いの舌先が触れ合う。
気持ち良くて背筋がぞくぞくする。
「……ふむ、ん、……んむ、ふ」
何度も何度も唇に吸い付かれて、舌を舐められ、互いの唾液が混ざっていく。
咥内に溜まったそれを、キスしながらも飲んだ。
名探偵の唾液が俺の中に入ってくることに、とてつもなく興奮してしまう。
「ふぁ、あ……んんっ、ん」
もっともっと名探偵を感じたくて、キスしながらも服を脱ごうとした。
だが発情した躰のせいで指先が震え、上手くボタンを外せない。
それに気付いたからかはわからないが、彼がズボンを脱がせてきた。
下着も一緒に引っ張られ、下半身だけ丸出しになる。
俺のチンコはとうに勃起して、だらだら先走りを零していた。
「はぁ、キッド、ここに、入れてぇ」
興奮して呼吸を荒げている名探偵は、すぐにアナルに触れてきた。
魔法で女みたいにトロトロにされたそこは、簡単に指を飲み込む。
「あ、あ……あんうっv」
指の付け根まで埋められ、括約筋の広がる感覚に、ゾクゾクゾクゥッと快楽が沸き上がった。
あ、あ、気持ち良い。
俺の中に名探偵の指が入っていくの、すごく気持ち良い。
強制的に発情させられてからずっと疼いていた場所を、ようやく弄ってもらえた。
たまんねぇ。
胎内を探る指が、前立腺を触れてきた。
くんっと押された瞬間、腰が大きく跳ねる。
一瞬彼の動きが止まったけれど、すぐにぐちゅぐちゅ掻き混ぜられながら、そこを何度も押された。
ぶわぶわっと大きな快感の波が押し寄せて、腰がガクガクする。
まだちょっとしか弄られていないのに、もうイきたくなっている。
「あう、駄目、イく、イっちまうっ」
どんどん溢れてくる快楽に、躰が侵食されていく。
我慢出来無くて下腹部に力を入れると、掻き混ぜてくる指の存在をまざまざ感じた。
しかも狭くなった胎内を、更に弄られる。
ああもう。
「ひあ、あ、あ……んう――ッvv」
あ、は、イっちまった。
尻でイくのが、こんなにも気持ち良いなんて。
それとも魔法のせい?
発情して敏感になっているからか、きゅうきゅう蠢いて指をしゃぶっているのが、自分でもわかる。
「ふぁ、あ、……あv」
絶頂にガクガク震えていると、ぬぷんっと指が抜けていった。
きゅっと閉じた括約筋の刺激に、背筋まで悪寒が走っていく。
以下オフ本にて。
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2019.08.10発行
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